「電話がつながらない」のはなぜでしょうか。ナゾナゾのような問いですが,答えは「回線をほかの人が使っているため,自分は利用できないから」です。家庭ではあまり問題になりませんが,会社でこんなことが頻繁に起こると業務に支障が出てしまいます。
電話をかけてから切るまでの間,割り当てられた通信回線や機器を占有(保留)するネットワークを設計するとき,その回線にどれくらいのトラフィック量があるか,そして接続要求がどのくらいの割合で拒否されるか,それぞれを数値で見積もる必要があります。そうしないと,電話がつながらないといったことが頻発して使いものにならなくなってしまいます。
「呼量」と「呼損率」とは
電話などの回線数を見積もるときに,登場する技術用語が「呼量(こりょう)」や「呼損率(こそんりつ)」です。「呼(こ)」とは1トランザクションのことです。電話の場合だと1回の通話,つまり,通話相手につないでから切るまでを指します。「呼量」は呼の延べ利用時間(「保留時間」と言います)を単位時間で割ったもので,アーランという単位を使って表します。
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図1●呼量と呼損率 |
例えば,1時間当たりに60回の通話があり,平均利用時間が1回当たり2分間(120秒間)だったとします。このときの延べ保留時間は120(秒)×60(回)=7200(秒)です。1時間は3600秒ですから,呼量は7200÷3600=2(アーラン)になると計算できます。
「呼損率」は,呼が発生したときに回線に空きがなくて接続が拒否される確率のことです。例えば,10回電話をかけて1回つながらない場合の呼損率は0.1ということになります。
数式は複雑なので表を使う
回線数が同じなら,呼量が増えるにつれて電話がつながらない確率,つまり呼損率が高まっていきます。したがって,呼損率を低くするためには回線数を増やす必要があります。このときに,アーランB式という理論式を利用して呼量と呼損率と回線数の関係を推測します。ただしアーランB式はかなり複雑です。覚えるのは大変ですし,計算するのはもっと大がかりです。
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図2●アーランB式 |
そこで,ネットワークの試験や実務では,理論式を基に作った呼損率表という対応表を使います。例えば,呼量が2アーランあって呼損率を0.1に抑えたい場合は,図中の表にあるように4回線を準備すればよいということが求められます。
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図3●呼損率表(アーランB式) |
逆に6回線あって呼損率を0.05に抑えたいときは,2.960アーランまでの呼量に対応できるというように呼損率表を読み解いていく活用法もあります。
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