クラスレスアドレッシング技術のうち,サブネット境界を自由に設定し,その役割と規模に合わせてサブネッティングする技術がVLSMです。また,ルーティング情報の簡易化に使用される技術としてルート集約があります。今回は,この2つについて学びましょう。

VLSM

 VLSM(Variable Length Subnet Mask:可変長サブネットマスク)は,クラスフルアドレッシングの「クラスネットワークでは同一のサブネットマスクを使用する」という制限をなくす技術です。これにより,一つのネットワークで異なるサブネットマスクを使用することができるようになり,サブネットをさらにサブネット化したり,複数のサブネットをまとめて1つの大きなサブネットにしたりすることが可能になります。

 このVLSMの利用の目的としては次の事があります。

  • IPアドレス割り当て時に生じる無駄を省くことができ,有効活用が可能になります。ネットワークで使用できるIPアドレスの実数を多くします
  • ルート情報を集約することができるようにもなります(ルート集約の有効性については後述)

 VLSMの例として,次のようなネットワークにIPアドレスを割り振る場合を考えてみます。クライアントが100台のサブネットが4つと,ルータ間のサブネットとして5つがあります(図1)。

 図1 400台のネットワーク
400台のネットワーク

 172.16.0.0/16を利用してサブネット化するとします。これを,単一のサブネットマスクを利用して割り振る場合,各サブネットで100台ですから,/25(255.255.255.128)の126台のネットワークを9つ(クライアントサブネット4つ + ルータ間サブネット5つ)使用し,1134個のIPアドレスを使うことになります。ですが,実際使用するアドレスは,100個 × 4 + ルータインタフェース14個 の 414個しか使用せず,大きく無駄が生じてしまいます。

 これに対し,VLSMでは100台のサブネットでは/25,ルータ間のサブネットは/30を使い,サブネットごとに使うマスク値を変えてやります。すると,126個 × 4 + 2個 × 5 = 514で,使用する個数に近い値となり,無駄を避けることができます(図2)。

 図2 VLSMを使用したネットワーク
VLSMを使用したネットワーク