モバイル・セントレックスは第2フェーズに突入した。KDDIが7月,携帯電話/無線LANのデュアルモード端末「E02SA」を出荷したからだ。電話機能の多くをBREWで開発し,最新の無線LAN技術を実装するなど,NTTドコモの「N900iL」が切り開いた市場に満を持して乗り込む。

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 携帯電話と無線LANの機能を備えたデュアルモード端末(デュアル端末)は,世界の中でも日本で独自の進化を遂げてきた。この市場を切り開いたのが,2004年11月にNTTドコモが出荷した「N900iL」だ。社内では無線LAN,社外では携帯電話で通話するコンセプトが受け,大阪ガスやイトーキなどの先進ユーザーが相次いで導入。企業が内線電話にモバイル端末を使うモバイル・セントレックスを定着させた。

 KDDIが投入したデュアル端末「E02SA」は,まさにN900iLの対抗商品に当たる。1年半の遅れは,「技術と市場の両面で,機が熟すタイミングを見計らってきた」(KDDIモバイルソリューション商品開発本部商品企画部の渡邉 真太郎課長補佐・商品企画4グループリーダー)ことの裏返し。N900iLにはない機能を盛り込み,拡張性の高い開発環境や最先端の無線LAN技術を実装した。「OFFICE FREEDOM」というソリューションとして,満を持して提供する。

 E02SAに続いて,秋にはフィンランドのノキアとボーダフォンが携帯電話/無線LANのデュアル端末「Nokia E60/E61」を投入する。NTTドコモも投入時期こそ口をつぐむものの,N900iL後継機の仕様の一部を明らかにした。これら新端末が続々と登場し,3大携帯電話事業者すべてでデュアル端末が使えるようになる。企業ユーザーにとっては,選択肢が格段に広がってくる。モバイル・セントレックスは第2フェーズとも言うべき局面に突入するのだ。

N900iLを意識した三つの特徴

 その先陣を切ったE02SAを分析すると,大きく三つの特徴が浮かび上がる(図1)。それぞれの特徴は当然,先行したN900iLを強く意識したものである。

図1●KDDIの携帯電話/無線LANデュアル端末「E02SA」の特徴
E02SAは,機能を自由に拡張できる「オープン」,5社のパートナに限定した「販売体制」,最新の機能が使える「無線LAN技術」と三つの特徴を持つ。企業ユーザーにとっては,それぞれメリットとデメリットがある。

 一つめの特徴は,“オープン”であること。携帯電話の多くの機能をBREWアプリケーションで開発,実装できるようにして,柔軟なシステム構築を可能にした。

 二つめは販売体制。E02SAを使って内線システムを構築できるのは,KDDIがパートナとして認めたインテグレータのみ(2006年9月19日時点で6社)。端末の内部まで入り込んだ機能を開発できるようにする代わりに,その情報公開先を絞る必要があったからだ。

 三つめは,最新の無線LAN技術を盛り込んだこと。2005年11月に標準仕様が文書化されたばかりのQoS機能であるIEEE 802.11eなどに対応する。