読者の皆さんの勤務先では,私用パソコンを持ち込んで社内LANに接続することは認められているだろうか。ITproで現在連載中の「データで見る中堅・中小企業のIT導入実態」によると,年商500億円以下の中堅・中小企業で「持ち込みPC等未許可PCの接続防止を実施している」企業の割合は,29.2%に達している。中堅・中小企業で3割が禁止ということは,セキュリティの縛りが厳しい大企業では,それ以上の企業が「私用パソコン」の社内への持ち込みを禁止している可能性が高い(注1)

 この数字を見て思い出したのが,先日,弊社の谷島編集委員がITproの「記者の眼」で取り上げた「従業員所有PC」である。会社がパソコンを買うのを止めて,一定額を支給する代わりに社員にパソコンを買わせて,それを仕事にも使わせるという考え方だ。もともとは,米ガートナーのデビッド・スミス フェローが谷島編集委員のインタビューの席上で語ったもの。その内容はITproの姉妹サイトである経営とIT新潮流に掲載しているので,詳しくはそちらをご覧いただきたい。

 この「従業員所有PC」の記事は,読者の大きな関心を集めたようで,記者の眼,スミス氏インタビューのどちらも,普段よりかなりの多くの読者にお読みいただいた。実際問題として,会社だけでは仕事が終わらないために,やむなく仕事を自宅へ持ち帰って私用パソコンで作業している人は少なくない。自宅で働かなければならないほど仕事量が多いことは問題だが,仕事量とは関係なく,会社と自宅の両方で同じパソコンを使い続けたい人にとって,従業員所有PCのコンセプトは朗報に思えるだろう。

 だが,現状では私用パソコンの社内LANへの接続が,多くの企業で禁止されている。ウイルスの持ち込みや情報漏えいといったセキュリティ上の懸念が存在するためだ。確かに,従業員すべてがパソコンのOSやウイルス対策ソフトのパターンファイルを最新状態にアップデートできる保証はない。万が一,大規模な情報漏えいが発生したら,後から事件の当事者を解雇しようとも企業のイメージダウンは避けられない。

 読者からは,「パソコンのセキュリティを自分で維持できる自信のある従業員だけが,申請方式で従業員所有PCを利用してはどうか」というご意見があった。それはそれで現実的だが,できれば全従業員が従業員所有PCの恩恵を受ける方法は考えられないだろうか?普及はまだまだだが,検疫ネットワークなどノート・パソコンの安全な持ち込みに利用できそうな技術も登場している。あるいは,クライアントであるパソコンにデータをいっさい保存させないシンクライアントのような方式もある。

 ITproの姉妹サイトであるEnterprise Platform 2006では,こうした問題意識に基づいて「パソコンの自由と管理」と銘打った企画を進めているところだ。管理のための管理ではなく,ユーザーにセキュリティやシステムトラブルの心配をさせずに,パソコンを自由に利用させるためには,どのような管理機能を提供すべきなのか?ご意見をお持ちの方は,ぜひコメントをお寄せいただきたい。


(注1)弊社が発行していた雑誌「日経Windowsプロ」が2005年2月から3月にかけて実施したアンケートでは「私物パソコンを企業ネットワークに接続できますか?」という質問に対し,回答者の45.6%が「接続禁止になっている」,33.3%が「一定の手続きを経れば接続できる」と答えている

【追記】
 注釈で紹介した「プロが教える正しいWindowsの管理」が掲載された「日経Windowsプロ」は2005年12月に休刊しましたが,コンテンツはPDF形式で「日経BP記事検索サービス」というサービスから購入できます。

 この特集記事には,1600人のシステム管理者/ユーザーの方に調査をした「Active Directoryの導入率」「ローカルの管理者権限をユーザーに与えている比率」「私物パソコンのネットワーク接続を制限している比率」「クライアントのセキュリティ更新を自動化している比率」などのデータ(調査時期は2005年2月)のほか,クライアント管理に成功しているシステム管理者に伺った「極意」が掲載されています。クライアント管理に悩まれている方に,是非ご一読いただきたいと思います。