◆今回の注目NEWS◆

◎平成19年度 総務省 重点施策(8月30日)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060830_3-5.html
◎平成18年度総務省所管予算概算要求の概要(PDF)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/pdf/060830_1.pdf

【ニュースの概要】8月30日、総務省が重点施策と概算要求を発表した。概算要求では、府省庁システムの全体最適化・外部専門家支援、新世代ネットワーク開発等の増額が目立った。


◆このNEWSのツボ◆

 総務省が平成19年度の重点施策と概算要求を発表した。私自身の経験からみても、次期政権発足間近のこの時期は、大型の施策の方針を打ち出すのは非常に難しい。新しい政権が「何を重視し」「具体的に打ち出していく政策は何か?」ということが、まだ見えてこないためである。今の段階で見えているのは、言ってみれば「選挙のための耳障りの良い公約(谷垣財務大臣の消費税率引き上げ論を別にして……だが)であり、具体性のある提案は首班指名後にならないと、なかなか出てこない。

 そのせいかどうか、総務省が発表した重点施策を見ても、あるいは、同じように発表された「次世代ブロードバンド戦略2010」を見ても、「ここが新しい!!」といったものは、なかなか見えてこない。

 ただ、こうした傾向は、ネット社会、ブロードバンド社会が、ある程度成熟し、また、地方分権の時代を迎えて、国が政策で旗を振り回して地方や民間をリードする……という時代ではなくなってきているということかもしれない。実際、経済産業省が発表した「情報大航海プロジェクト」の評判もあまり宜しくない(参考:スラッシュドット ジャパン「国産でGoogle越えを狙う情報大航海プロジェクトコンソーシアム発足」など)。

 先に引用した総務省の予算要求を子細に見ると、全体予算が厳しく制約される中で、増額が目立つのは

・府省庁システムの全体最適化・外部専門家支援 24.6→ 32.8
・次世代公的個人認証等の開発 3.0→ 11.0
・新世代ネットワーク開発等 86.0→ 126.5
・情報漏洩対策技術の研究開発 (新規)16.0

などである(単位:億円)。

 全体としては、「安心・安全対策系(情報漏洩対策など)」「今までの施策で推進したシステム等の不具合の改善(システム最適化、次世代公的認証など)」が多いことが目立っている。

 今後は、こうした形で、ブロードバンド社会、ネット社会の外部不経済を防ぎ、全体最適を目指すような施策が増え、いわゆる「日の丸プロジェクト」は、縮小の方向にある……ということになっていくのかもしれない。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はウッドランド社長、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営コンサルティング、IT戦略コンサルティングまで幅広い領域で活動する。