「IP電話導入奮戦記」が最終回を迎えた。システムをよく知らない総務部門の筆者が,IP電話の導入を担当することになり,苦労してシステムの稼働までこぎつけるという話である。これ自体,珍しい話ではない。この奮戦記は,そのときどきの筆者の正直な気持ちや,ベンダーや社員などの行動を,細かく的確にとらえているところが面白い。笑える。電車の中で読んで,笑いをこらえるのに苦労したことが何回もある。これまで,この連載を読んだことがない方は,ぜひ一度見てほしい。IP電話にそれほど興味がなくても,楽しめると思う。

 話は,IP電話ブームのなか,真面目半分,暇つぶし半分で,IP電話ベンダーの営業と付き合うところから始まる(第1回)。そのうち,営業トークがワンパターンであることに気づき始めた。合言葉は「コスト削減」(耳が痛い)。IP電話の営業を“ペテン師”と思うようになった。そんなところに,社長からIP電話導入の指令が下る。

 ほかの社員に担当してもらおうと働きかけるが希望かなわず。それではと,すべての電話をIP電話に置き換えるのは不安なため,PBXを残して併用することを考える。しかし,経営陣は,スペースやコストの面からフルIP化を迫る。そこで一計を案じて,PBXベンダーとIP電話ベンダーの両者を呼んで“対決”させる。PBX併用という結論を期待したが,徒労に終わった。PBXの完全廃棄が決まった。

 IP電話導入にあたり,ネットワークは現状のままで大丈夫と聞いていた。しかし,ベンダーのシステムを見学に行ってがく然とした。自社のネットワークと違い,完ぺきなネットワークでIP電話を運用していた。この状況で「大丈夫ですよ」といわれても,不安が増すばかり(第2回)。

 導入作業でトラブルが発生。徹夜をして,なんとか解決したものの,今度は社員が騒いでいる。「音が聞こえない」「転送はどうしたらいいのか」・・・。使い方がわからないのだ。説明会を開いたのに出席しないで,手取り足取り教えてくれるのを待つ社員。社長は「収拾してよ」と軽くひとこと(第3回)。

 顧客から電話がかかってきたとき,だれも出なかったら失礼と思い,隣の部署などに転送することにした。その転送に切り替えるまでの時間を聞かれ,「電話を8秒以上待たせる社員はいない」と大見得を切った。これがまたトラブルを生む(第4回)。

 後半になると,ひょうひょうとしたユジュン氏が登場。頼りになるようなそうでないような・・・。

 などなど,文字通りの奮戦記,全7回である(記事一覧)。ノウハウ満載というわけではないが,IP電話導入の現実を実感できる。