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第22回 適切な「色」の選び方
三井 英樹@日刊デジタルクリエイターズ
Webサイトを設計する際,「色」は様々な問題を起こします。開発者それぞれの想いが込められやすいのかもしれません。開発末期になってから,色の変更指示で不眠開発になるという話は,いまだ昔話にはなっていません。 色の問題を解決するためには,色についての知識があったほうが助かります。ただし,色自体の講釈をここではしません。色を決めていく過程の参考になりそうなことを記します。 刷り込まれている色/固定イメージのある色私たちは様々な色に囲まれて生活しています。その中で,色と行動が一番密接にかかわりを持つのは「信号」です。我々の取るべき行動を色が指示します。それはあまりに一般的になりすぎて,我々は無意識のうちにそれらの色に対して同様の行動パターンを取りやすくなっています。 例えば,赤色を見ると何か危険なことがそばにあるのかもしれないと警戒したり,黄色の標識を目にすると周囲に対して少し注意力をはらったり,といったことはよくあるでしょう。それは,社会全体があるルールに基づいて色を使用していることと関係があります。 安全色という概念が,JIS(日本工業規格)によって定められ,多くの標識などがこれに従って作られています。こうした統一ルールが,非常時にもパニックにならず同じ判断を下せるよう,我々の中に色に対する固定されたイメージを育てているのです。
したがって,この「意味」から外れた色の使われ方をされると,私たちは戸惑います。例えば,赤色の点滅を単に目立たせるためだけに使われた場合です。それを見る私たちは,サイレンのようなイメージが頭の中に浮かび,緊急事態を連想してしまうからです。 モノからイメージされる色逆に,「モノ」から固定の色がイメージされやすいものがあります。身近な例でいうと,多少個人差がありそうですが,「牛乳のパッケージ」などがわかりやすいかもしれません。 子供時代,給食でガラス瓶の牛乳に見慣れたためか,「牛乳」には「白」のイメージが私には付いています。同時に,ガラスの色や清潔感,白を引き立てる意味からか,「青」も違和感なく結びつく色として,私の色彩感覚には入力されています。 これは,買い物に行ったときに,牛乳が欲しければ白や青のパッケージを探す,という行為に繋がります。何も意識しないでも,牛乳を買いに行けば,この色を目が自動的に探しているのです。その結果気づくことは,それらの色のパッケージの牛乳がかなりあるということです。 つまり多くの人にとって共通に「牛乳=白or青」という意識があるのだろうと思われます。逆に言えば,これらの色にしておけば,多くの人たちに「牛乳」だと気づいてもらいやすい土壌がすでにあるということです。 戦略的な色しかし,すべての牛乳が白か青だとしたらどうなるでしょうか。店の棚としては統一感はあるでしょうが,個性がありません。購入者はお目当てのメーカーの牛乳を探すのに,苦労するかもしれません。 そこで,多少「常識(何が常識かは,かなりあいまいですが)」はずれな色――紫,赤,緑,灰色など――が実は結構存在します。「牛乳=白or青」と頭のどこかに刷り込まれている私には,正直,違和感を感じるパッケージも多々あります。でも,最初の関門を通過すれば,青や白の棚の中で,ひときわ個性的に自己主張する牛乳パッケージになるのは理解できます。 色選定の参考正直に言えば,牛乳に紫や赤をもってくるパッケージ・デザイナの勇気には驚きすら感じます。では,こうした色はどのように決まるのでしょうか。消費者の目にどう映るかは,少なくとも下記の三つの方向性から検証されていると言えるでしょう。
三つの視点からの「色」の決定 まずは「戦略的な色」の視点です。どんなサイトでも,その企業のコーポレート・カラーを無視できません。どんな製品やサービスであっても,競合他社の色合いでの広報活動は許されるはずがないのです。コーポレート・カラーという定義が明確に存在する限り,この「縛り」が一番厳しいものだと思います。サイト全体の色構成はここから始まるのが普通でしょう。 製品(群)にテーマのようなものがあり,そのテーマ色のようなものがあれば,それも大きな視点になります。サイト全体として,その色調を保つ必要がありますし,ボタンやテキストの色なども,それらを印象深くすることを目指すべきでしょう。 二つ目は「固定イメージのある色」とうい視点です。人とモノとに目を向けるのです。それぞれの色には,何かしらイメージがあるわけですから,その固定イメージを最大限に活用するように色を選びます。それはその色を好む人たちを対象ユーザーに迎え入れることを意味します。 三つ目は「商品からイメージされる色」という視点です。商品やサービスをイメージしやすい色を選定するのです。提供しようとしている「モノ」が明確であるほど,これらの色選定もすっきりと進むはずです。
三つの視点からの「色」の決定:その2 モニターが何万色で表示できようとも,これら三方向からの観点で色選びをしていて,「戦略/対象ユーザー/提供するモノ」が明確であるならば,組合せはそれほど多くはならず,適切な色を選択できると思います。逆に言えば,もし昨日指示した色を今日変更する,というようなケースが頻発するなら,それはWebサイトの設計以前に何か軸足が揺らいでいるということを意味している可能性があります。 「色」は最終的に,直接エンドユーザーに届く「要素」です。決して誰かの趣味や気分で決めるべきものではありません。細心の注意を払って選ぶべき課題なのです。もしWebサイトの一部分でも色を決める機会があるのなら,こうした三つの観点から,お客様の目に触れて何を伝えたいのかを考えてみてください。お客様とのコミュニケーションという言葉が,もう少しリアルに感じられるかもしれません。
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