Windows Vistaの製品候補版1(RC1,Release Candidate 1)は,Beta 2と比べて大きな進歩を遂げている。腹立たしい迷惑なバグは消滅したし,User Access Control(UAC)の挙動に悩んだり,イライラさせられることもなくなった。山ほどあったアプリケーションやハードウエアの非互換性は解消され,パフォーマンスの問題もなくなった。Windows Vistaは,ここにようやく完成のメドが立ったといえるだろう。

 筆者はこれまで何年にも渡って,Windows Vistaの背景を解説する記事を書き続けてきた。その間,筆者のWindows Vistaに対する評価は,最新のベータ版の出来栄えによって,激しく上下した。幸福な時代(PDC 2003)もあれば,不幸な時代(公開ベータ版が1年間もリリースされなかった)もあった。優れたビルド(5536)もあれば使い物にならないビルド(Beta 1,Beta 2)もあった。うれしいニュース(多くの機能がWindows XPに移植される)もあれば悲しいニュース(数え切れないほどの延期,機能の削減)もあった。

 しかしもう,そんなことはどうでもよくなった。すべては,今回リリースされたRC1の実力によって決まる。読者のみなさんがこの記事を読んでいる間にも,世界中でナード(技術おたく)がWindows Vista RC1をダウンロードし,インストールして,評価し始めている。あえて推測すれば,筆者は彼らのほとんどがとてもエキサイティングな時間を過ごすだろうと考えている。言い換えれば,これこそが3年前に約束されたWindows Vistaなのだ。

最新ゲームがWindows Vistaで動くように

 米Microsoftは,2006年5月にBeta 2をリリースしてからも,Windows Vistaに大幅な変更を加えている。しかもその多くは,秘密裏に行われてきた。

 例えば,Windows Vista RC1はBeta 2に比べて,安定度が目に見えて増しており,パフォーマンスは劇的に改善されている。ゲームは突然正常に動作するようになった。Microsoftから筆者が聞いた話では,ほとんどのビデオ・ゲームは,Windows XP上と変わらない速さで,Windows Vista上でも動作するそうだ。確かに「Half-Life 2」のような最新ゲームがいつのまにかWindows Vistaで何の問題もなく動作するようになっている。Beta 2では,最新ゲームは全くと言っていいほどプレイできなかったのだが…。

 Internet Explorer 7(IE7)には新しいツールバー検出機能が追加され,ユーザーがIE7との互換性がないIE6用ブラウザ・ツールバーをインストールしたり,使用したりできなくなった。これまでは,互換性のないツールバーもインストールしたり実行したりできたが,常にIEをクラッシュさせていた。また新しいActive Xインストーラ・サービスによって,一般ユーザー(管理者権限のないユーザー)も,承認済み(問題がないことが既知)のActive Xコントロールであれば,管理者の承認を得ることなくインストールできるようになった。

 Windows Vistaのペアレンタル・コントロール機能もぐんと良くなり,管理作業が単純化された。これまでは,すべてのペアレンタル・コントロールがオフになっていたが,Windows Vista RC1では,新しいデフォルト値が設定されるようになった。

鬱陶しさが減ったUAC

 User Access Control(UAC)は本当に改善された。筆者は以前,UACを酷評したものである(関連記事:現時点で判明した「Windows Vistaの欠点」を暴く)。Microsoftは筆者が懸念していた問題をすべて解決し,さらに改良を加えている。

 Windows Vista RC1では,UACによって表示される警告画面の数が大幅に減少し,表示された場合の対応もかなり楽になった。また,メイン画面に警告画面を表示させない機能や,管理者権限を持たないユーザーでも修正パッチをインストール可能にする機能,コントロール・パネルでスキャナやカメラ,ファイアウオールに関する設定を変更した場合に警告を表示させない機能などが追加された。

 何よりもありがたいのは,UACの警告画面にフォーカスが移動しなくなったことだ。使用しているアプリケーションが警告画面を表示させた原因でないのなら,警告画面を放置したまま別の作業を好きなだけ続けられる。ただし,UACの画面はそのままだ。

メタデータで音楽,写真,動画の管理が可能に

 Media Center機能は,「Windows Photo Gallery」や「Windows Media Player」と統合され,これらのアプリケーションで付けたメタデータ・タグ機能を使って,音楽や写真,動画データを並び替えたり,選択したりできるようになった。Microsoftは様々なタグをWindows Vistaにあらかじめ組み込んでいる。例えば,写真を管理するWindows Photo Galleryには「Flowers(花)」「Landscape(風景)」「Ocean(海)」「Wildlife(自然)」といったタグが用意されている。

 Windows Vistaは,HD-DVDとBR-DVDの両方に対応しているが,これらの動画が統合的にサポートされているわけではない。つまり,Microsoftは,ベンダーがパソコンに組み込んだHD-DVDプレーヤ・ソフトやBD-DVDプレーヤ・ソフトが,Windows Vistaで正常に動作することを認定するだけである。

「数千個」増えた対応デバイス

 Windows Vista RC1では,初期状態で使用できる周辺機器(デバイス)の数が増えた。Microsoftは正確な数を教えてくれなかったが,RC1に含まれるデバイス・ドライバの数は,Beta 2よりも「数千個」増えており,Windows Vistaの初回起動時に自動実行されるWindows Updateによって,その数はさらに増えるという。

 Microsoftによれば,無線装置,プリンタ,SATAコントローラ,Media Center TVチューナの各ドライバが,大幅に改良されているという。筆者がRC1を最初にインストールした2台のパソコン(1台はデスクトップ,もう1台はノート)では,オーディオ・ドライバを除くすべてのハードウエアが完全に認識された。そして,そのオーディオ・ドライバも,数分も経たぬうちに自動的にダウンロードされ,インストールされた。これはすごい。

 既にご存知の読者もいるかもしれないが「WinFX」は賢明にもその名前が「.NET Framework 3.0」に変更された。このソフトウエアはデフォルトでRC1に搭載されている。.NET FrameworkがWndowsクライアントにデフォルトで搭載されたのは今回が初めてだ。

 管理者権限で古いDOSコマンド・プロンプトを起動すると,アプリケーションのタイトルバーに「Administrator」と表示され,リスクのある操作をしないようにユーザーの注意を喚起するようになった。何もしないよりはマシ,というところか。