「ネゴる」「サチる」ってどういう意味?

(イラスト・アニメーション:岸本ムサシ)

  今回の回答者:
村上 健一郎
法政大学ビジネススクール
イノベーションマネジメント研究科 教授

 研究者や技術者は「ネゴる」「サチる」といった言葉をしばしば使います。「なんだそれは?」と疑問に思う人もいるでしょう。

 「ネゴる」「サチる」はどちらも,「サボる」と同じように英語を短縮して動詞化した言葉です(サボるは元々フランス語ですが)。

 「ネゴる」は「negotiation(ネゴシエーション)」を短くしたもので,「交渉」という意味です。「事前に上司とネゴっておく」というように日常でも使いますね。ネットワークに関して言う場合は,送り手と受け手が通信を始めるに当たって,速度や変調方式などをすり合わせることを指します。

 「サチる」は「saturation(サチュレーション)」から来ています。これは「飽和」という意味で,アナログ技術や化学の用語として使われることが多いようです。ネットワークで「サチる」というと,通信するための帯域がいっぱいになったりデータの処理が限界に達して,それ以上速度が出ない状態などを指します。

 ネゴるやサチるに限らず,研究者や技術者が会話する場面では,このような独特の専門用語が多く出てきます。これらの言葉を「jargon(ジャーゴン)」といいます。公式に使う専門用語を「technical term(テクニカルターム)」と呼ぶ一方で,仲間うちだけで通じる用語をjargonと呼ぶのです。ニュアンスは「隠語」に近いですね。

 最近は,日常的にコンピュータやインターネット系のjargonを聞く機会が増えました。コンピュータがおかしな動作をすることを「バグる」,検索エンジンの「Google(グーグル)」で検索することを「ググる」と言ったりするのもjargonです。インターネット上にはjargonをまとめたサイトもあるようです。ググってみるとおもしろい発見があるかもしれませんよ。