(イラスト・アニメーション:岸本ムサシ)
今回の回答者: 粟飯原 勝行 住友電気工業 情報通信事業本部光通信事業部 技術部事業開発グループ 主席 |
切れたりして使えなくなったLANケーブルはどこに捨てればいいのか,LANケーブルが何でできているかを知らないと,判断は難しいですよね。
LANケーブルというのは,銅線,ポリエチレン,ポリ塩化ビニールなどでできています。銅線をポリエチレンで覆って2本ずつより合わせ,それを4組束ねてまたより合わせてポリ塩化ビニールを覆いかぶせ,作っています。
企業の場合は,産業廃棄物として専門業者に回収してもらうのが普通です。住友電工では,コネクタ部分は切り取って燃えないゴミに出し,ケーブル部分は専門業者に出しています。ケーブルの素材には再利用できるものがあるので,専門業者で一本ずつ解体して,リサイクル処理しているのです。
家庭で捨てるなら燃えないゴミに出すのが一般的です。ただ,ゴミの分別の仕方は区市町村で違いがあります。リサイクル対象の「プラスチック類」として出せるところもあるようです。
本当は燃やすこともできますが,それには摂氏800度以上の高温で完全に焼却しないといけません。LANケーブルに使われているポリ塩化ビニールを不完全燃焼させるとダイオキシンが出ることがあるからです。
とはいえ,燃えないゴミとして土に埋めれば安全というわけでもありません。ポリ塩化ビニールには環境ホルモンの疑いがあるフタル酸エステルという化合物が含まれています。環境ホルモンとは人間の体内に入ると生殖機能などに悪影響を与える物質です。2003年6月に環境省がフタル酸エステルは環境ホルモンではないという研究結果を出しましたが,不安は残ります。
そのため,最近はポリ塩化ビニールの代わりに難燃ポリエチレンという素材を使うLANケーブルが増えています。これだとダイオキシンや環境ホルモンの心配はありません。