三浦 雅孝 アイ・ピー・ビジョン
CTO
三浦 雅孝

Skypeキラーとして登場したGizmoプロジェクト。利用は簡単である。ソフトウエアをダウンロードして、登録すればすぐに使えるようになる。固定電話や携帯電話にも電話ができ、通話料金は安い。Google Mapと連動するなど、面白い機能も備えている。

 今回から2回にわたり、昨年から始まったSIP(Session Initiation Protocol)による新しいコミュニケーション・サービス「Gizmoプロジェクト」を紹介する。併せて、このサービスが持つインターネット電話の新たなる可能性について考えてみる。

 Gizmoプロジェクトは、もともと米SIPphone社のサービスであった。そして昨年8月にサービス内容を拡大させて、Gizmoプロジェクトとしてタートした。これに伴い同社は7億円の融資をベンチャー・キャピタルから得ている。

“Skypeキラー”として登場

 無料のインターネット電話というと、まず思い浮かぶのが「Skype」である。世界ではすでに1億1000万人を超える登録者がいる。日本でも登録者数は400万人以上になっている。しかも、日々増え続けている。一方Gizmoの登録者はまだ70万人程度であるが、こちらも日々増え続けている。

 ルクセンブルクのSkype Technologiesを買収したeBayは、オークション・サービスでSkypeを利用している。オークションの出展画面のアイコンをクリックすると、出展者とSkypeでつながり、直接商品の内容などを問い合わせることができる。いまのところ、住宅など、高額な商品に限定したサービスとなっている。

 Gizmoプロジェクトは、まさに“Skypeキラー”として登場した。当初の同社のWebサイトには、「No Spyware」というキャッチフレーズが掲載されていた。これはSkypeを意識したフレーズだ。というのは、SkypeはP2Pで通信しており、ほかのSkypeの通話を中継したりする。このため、スパイウエアと揶揄(やゆ)される。これがセキュリティ上の問題とされ、Skypeの使用を禁止する企業などは少なくない。Gizmoは、センター型で、ほかのGizmoユーザーのデータを中継することはない。

 もうひとつ、Gizmoの特徴に標準プロトコルであるSIPを採用している点である。ほとんどのSIP対応の電話で通信が可能である。Skypeにはない特徴である。プロバイダ間をまたいでも相互接続が可能で、テレビ電話などのサービスも利用できる。

実際に使ってみる

 GizmoプロジェクトのWebサイトからソフトウエアをダウンロードし、簡単な登録手続きをすれば利用できるようになる。

 日本語のWebページを用意しており、インストーラも日本語に対応している。ただし、本体ソフトはまだ日本語化されていない(現在、英語、フランス語、スペイン語、イタリア語をサポート)。登録手続きをすると、アカウントが発行される。「ユーザーID」と「SIPアカウント」である。ユーザーIDは、「ユーザー名@ドメイン名」と電子メール・アドレスに似た形式である。SIPアカウントは米国の電話番号フォーマット(1-747-xxx-xxxx)と同じ形式となっている。

 2つのIDが発行されるのには理由がある。SIPはインターネット上のプロトコルであり、メール・アドレスやURLのようにパソコンと親和性が高い。たとえば、「sip:ユーザー名@ドメイン名」とWebでリンクを作成すれば、そこをクリックすればソフトフォンなどが起動し、そのあて先に電話をかけられる。Gizmoクライアントがインストールされていれば、Gizmoクライアントが自動的に起動、発信する。こんなリンクを埋め込んだWebページが近い将来多く出現するだろう。

 一方、SIPアカウントは、通常の電話機のためのものである。数字キーしか備えていない電話機からもSIP電話に通話するために、数字表現によるSIPアカウントも用意している。もっとも、この電話番号で直接、相手先につながるわけではない。これについては、次回説明する。

 ちなみに、Gizmo以外のSIPサービスからGizmoに電話をする場合は「ユーザー名@proxy01.sipphone.com」または「SIPアカウント@ proxy01.sipphone.com」で接続できる。まさに電子メールを利用するのと同じ感覚である。

写真1●Gizmoクライアント画面
本コラムの共同執筆者である本田 恵一氏に電話をしている。
[画像のクリックで拡大表示]
 セットアップが完了したら、「**」をダイアルしてみよう。設定やルーター、ファイアウォールに問題がなければ、Gizmoプロジェクトのアナウンス・マシンに接続され、あなたのSIPアカウントを自動で読み上げてくれる。これで開通試験が完了だ。

 ユーザー・インタフェースもよくできている。トップ・ウインドウにはコンタクト・リスト(アドレス帳)とプレゼンスが表示されており、クリックのみで発信できる(写真1)。電話発信する段階で、1行のメッセージを一緒に送信できる機能もある。受信した側は、電話を取らずして電話の趣旨を把握できる。