偽装請負(1)請負と派遣の違いは指揮命令系統最近新聞報道などで,「偽装請負」という言葉がよく取り上げられるようになってきました。 経団連会長が偽装請負について解消策の検討を指示する,厚生労働省も平成18年9月4日付けで「偽装請負に対する当面の取組について」という文書を発表する(注1)など,偽装請負の問題は拡がりを見せつつあります。新聞報道などでは,製造委託などメーカーが取り上げられることが多いのですが,もちろんシステム開発なども請負契約で行われることが多く,IT業界も偽装請負の問題と無関係ではありません。というより「偽装請負」であることを十分認識せずに,「当たり前のこと」として行われているのが実態ではないでしょうか。 そもそも「偽装請負」とは,どのようなことを指しているのでしょうか。偽装請負も普通の請負も,契約上は請負契約という形を採っています。なお,契約書の名称としては「システム開発契約書」という名前かもしれませんが,ソフトウエアを完成させることを契約の内容としている場合には,請負契約(あるいは請負と委任等の混合契約)としての性質を持ちます。
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| 図1●請負契約における請負企業とユーザー企業の関係 |
請負企業内でシステム開発作業を実施している場合は,指揮命令も当然請負企業からなされているので,偽装請負は問題になりません。これが典型的な請負の場合です。これに対して,請負企業の労働者が派遣先のユーザー企業に常駐するような場合には,偽装請負が問題となってきます。
もちろん,ユーザー企業に常駐していると,すべて偽装請負になるわけではありません。ユーザー企業がいったん請負企業に指示を伝え,請負企業がその管理者を通じて従業員を指示する等の一定の要件を満たせば偽装請負とはなりません。ユーザー企業が,請負企業の従業員に対して,直接指揮命令を行うと偽装請負ということになるのです。
法律的には,他の企業に雇用されている労働者に対して直接指揮命令することが認められているのは,図2のような,いわゆる派遣法に基づいて派遣された労働者のみです(注2) 。派遣法にもとづく派遣の場合には,雇用契約は派遣元の会社(いわゆる派遣会社)との間にあるのですが,指揮命令は派遣先企業が直接行うことができます。
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| 図2●派遣契約における派遣元,派遣先,労働者の関係 |
派遣を当たり前のことだと考えておられるかもしれませんが,派遣法による派遣は,労働法上はあくまでも例外であるとの位置付けです。従って,派遣法で認められている場合以外の派遣事業(労働者供給事業)は認められていません。偽装請負は,派遣法で認められている以外の労働者供給事業として,職業安定法違反となるのです。
「偽装」請負になるのかどうかは,請負としての実質をもっているのか否かにより区別されます。次回は,その区別の基準について解説します。
(注1)平成18年9月4日厚生労働省報道発表資料「偽装請負に対する当面の取り組みについて」
(注2)厳密には,労働組合等が厚生労働大臣の許可を受けた場合は,無料の労働者供給事業を行うことができます(職業安定法45条)。ただし,大臣の許可があり,かつ,無償でなければならないので,ここでは派遣の場合のみを念頭に解説しています
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■北岡 弘章 (きたおか ひろあき)【略歴】 弁護士・弁理士。同志社大学法学部卒業,1997年弁護士登録,2004年弁理士登録。大阪弁護士会所属。企業法務,特にIT・知的財産権といった情報法に関連する業務を行う。最近では個人情報保護,プライバシーマーク取得のためのコンサルティング,営業秘密管理に関連する相談業務や,産学連携,技術系ベンチャーの支援も行っている。 2001〜2002年,堺市情報システムセキュリティ懇話会委員,2006年より大阪デジタルコンテンツビジネス創出協議会アドバイザー,情報ネットワーク法学会情報法研究部会「個人情報保護法研究会」所属。 【著書】 「漏洩事件Q&Aに学ぶ 個人情報保護と対策 改訂版」(日経BP社),「人事部のための個人情報保護法」共著(労務行政研究所),「SEのための法律入門」(日経BP社)など。 【ホームページ】 事務所のホームページ(http://www.i-law.jp/)の他に,ブログの「情報法考現学」(http://blog.i-law.jp/)も執筆中。 |