今やエンジニアの転職が一般的になったIT業界。キャリアアップの手段として、転職を前向きに考えるエンジニアは少なくない。では、エンジニアが求める転職のあり方とはどのようなものであり、転職先としてどのような企業を志望しているのか。今回、日経HRではITエンジニアを対象にアンケート調査を実施した。その結果を基に、ITエンジニアの転職意識について考えてみたい。

図1●調査の概要
図1●調査の概要
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“勝ち組”企業に人気が集中

 「働いてみたいIT企業トップ30」では、マイクロソフト、野村総合研究所、日本アイ・ビー・エムが昨年に引き続きトップ3を堅持している。

図2●働いてみたいIT企業 トップ30
図2●働いてみたいIT企業 トップ30
(マルチプルアンサー 数字は回答者数)
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 メーカーからソフトウェア/SIベンダー、コンサルティング会社、通信キャリアに至るまで、業種を問わず業界大手に人気が集中する傾向は依然として変わらない。その理由としてはいくつか考えられるが、一つには、技術力・総合力でリードする大手企業は事業分野も幅広く、多様な経験やスキルを生かせるチャンスに恵まれていること、さらには、社員教育に熱心でスキルアップの機会にも恵まれていること、などが挙げられよう。現在のIT業界では、デファクトスタンダードたりうる強い技術や製品・サービスを持つこと、もしくは上流工程を独占するプライムコントラクターであることが、高収益を上げるための2大条件となっている。収益性の高い“勝ち組”企業でなければ、転職後の給与・待遇アップは望めない。ITエンジニアの大手志向には、こうした背景があると考えられる。

インターネット新興勢力も台頭

 人気企業の基本的なラインアップは昨年と大差はないが、今年はKDDIや東芝、アクセンチュアなどがトップ30入り。デジタルエンタテインメント分野で躍進するコナミ、総合インターネット企業への脱皮を図るUSENなど、新興勢力の台頭も目立つ。

 イメージ項目別の調査結果をみると、ITエンジニアが転職先に期待するものが浮き彫りとなっている。

図3●企業イメージ項目別 トップ10
図3●企業イメージ項目別 トップ10
(マルチプルアンサー)
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 「安定性がある」「優秀な技術者が多い」「働く環境・設備がよい」という設問では、国内・外資を問わず業界大手が名を連ねた。一方、「会社に勢いがある」企業ランキングでは、ボーダフォン買収で携帯電話事業進出にはずみをつけたことも影響してか、ソフトバンクBB、ヤフーのソフトバンク・グループが1、2 位を独占した。さらに「経営者が優れている」という項目でも上位につけ、ソフトバンク・グループに対する期待値が着実に高まっていることがわかる。

 「専門性・スキルを生かすチャンスがある」企業としては、トレンドマイクロやシマンテックなどのセキュリティベンダーがトップ10入り。世界的にセキュリティ管理やリスク管理のニーズが高まる中、ITエンジニアも成長分野の動きに敏感に反応していることがうかがえる。

図4●調査対象者フェースシート
図4●調査対象者フェースシート
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