「どうして時間内に完了できなかったのだろう。下調べが不十分だったのか。それとも,タスクの分解の仕方が甘かったのかも。もしそうなら,どうしたらよいか」――。札幌スパークルの桑原里恵システムコーディネーターは夜にノートを見ながら,その日の仕事ぶりを検証することを日課にしている。

 ノートには桑原氏が書いた1つの表がある。それは今日1日で行った主要なタスクごとに,予定していた所要時間と実際にかかった時間を対比したものだ。桑原氏はこれを見ながら,所要時間の予定と実績が食い違ったタスクを1つひとつ取り上げて,なぜ遅れたのか(もしくはなぜ早く終えられたのか)という要因を探り,対策を練る。いわば,1人で行う「カイゼン活動」だ。

 「予定以上に時間を要したということは仕事のやり方か,そうでなければ所要時間の設定に問題があるはず。なのに『次回はもっと頑張ろう』で片づけていては,また同じことを繰り返す」(桑原氏)。1日の終わりで疲れていても,このカイゼン活動は欠かさないという。

スキルを継続的に向上

 ここまでに解説してきたタイムマネジメントのテクニックは事前準備に加え,適切に準備・計画すること(Plan),それに集中して実行すること(Do)だ。そうなれば当然必要なのが,CheckとActionである。この一連のPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回すことで,仕事のやり方やタイムマネジメントのスキルつまり自分の仕事術を継続的に向上できる。桑原氏のカイゼン活動はまさにCheckとActionであり,日々PDCAサイクルを回すことにほかならない。

 では,PDCAを回すには具体的にどうしたらよいのか。最もシンプルなのは,「毎日の終業後に手帳を見ながら,今日1日でどれだけのタスクを片づけられたかを確認する」(デュオシステムズの渡辺康隆・ビジネスソリューション・グループシステムアーキテクト)ことだ。「片づけることができたタスクの量は,自分自身の能力そのもの。これと毎日向き合うことで自然と,次はもっとこうしようという具合にやる気がでる」(同)。

詳細な記録を残す


図3 詳細な時間記録の例。
雑談や休憩などによる中断時間も記録する
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 これだけのことなら帰りの電車の中でもできるので,毎日の習慣にすれば苦になりにくい。だが,より大きな効果を望むなら,1日の仕事ぶりについて詳細な記録を残す必要がある。具体的には,「10時4分~10時18分:顧客に電話」といった具合に分単位で自分の行動を記録し,タスクごとに所要時間を集計する(図3)。

 こうして時間という数値で自分の仕事ぶりを管理すれば,客観的に自分の能力を把握できる。例えばリクルートの本間浩一Federation of IT LEMMAプロジェクト・プロジェクトマネジャーは,仕事で英会話が必要になって以来,定期的に英語試験の「TOEIC」を受験するとともに,日々の英語の勉強時間を記録している。そして「TOEIC」の試験結果を受け取るたびに,前回のテストから今回のテストの受験日までに費やした勉強時間を集計する。これによって,1時間の勉強で何点スコアを伸ばすことができたかを計算する。

 「単純にスコアが何点上がったといって喜ぶのではなく,そのためにどれだけの時間を投入したかも併せて考えることで,勉強の仕方がよかったのか悪かったのか,次回の目標スコアをクリアするにはどれだけの勉強時間が必要かといったことが分かる」(本間氏)。

 同じように,定期的に行うタスクや類似のタスクについて所要時間を集計していけば,仕事のやり方が良くなっているのか悪くなっているのか,どこに問題がありそうかといったことを,客観的に把握できる。

 このように詳細な行動記録を付けてカイゼン活動に結びつける方法として,「PSP(Personal Software Process)」がある。詳しくは,次回の記事を参照して欲しい。

(中山 秀夫)