IT業界に端を発した「2007年問題」。今やこの問題と無縁でいられる企業はまずいないだろう。後継者の発掘・育成はどの企業も頭が痛いところ。その分野が有望で成長が見込める市場ならなおさらだ。

 後継者の育成で問題となるポイントは,単純には二つあると思う。第1は,現役の人の能力や役割が依然として魅力的なものであっても,定年のような外的な強制要因によって引退を迫られてしまうこと。第2は,後継者と目される人のスキルが思うように高まらないこと。そして第1と第2のギャップが大きいほど,問題は深刻となる。

 実はこの構造,PHSや携帯電話を企業の内線電話として使う「企業内モバイル」の現状にぴたりと当てはまる。ここでは日経コミュニケーションが最新の「企業ネット実態調査」で集計したばかりのデータを使って説明してみたい。

 まず,企業内モバイルの端末には,構内PHS,携帯電話/無線LANのデュアルモード端末,無線LAN機能を搭載したIP電話機がある。現在は構内PHSの独占状態。今回の調査で企業内モバイルを「導入済み」と回答した354社のうち,91%に当たる323社が構内PHSを使っている。ところが昨年の調査結果と比べると,採用企業数が385社から62社減っているのだ。正確には利用を中止した企業に理由を聞いてみる必要があるが,「2007年度第3四半期」が近づいてきたことが少なからず響いているのだろう。それはNTTドコモのPHSサービスを終了する時期なのだ。加えて電力系地域通信事業者が手がけていた旧アステル系PHSサービスも,そのほとんどが終了している。

 とはいえ,いまだPHSの復活に期待するユーザーは少なくないことが,今回の調査に基づく特集取材で明らかになった(日経コミュニケーションの9月15日号に掲載予定)。また現行の構内PHSユーザーのうち,PHSの将来性に不安を感じている企業は約1/4というデータも判明した。孤軍奮闘のウィルコムが,企業向けサービスを拡充している点が評価されているのだろう。PHSはまだまだ現役で活躍できるといえそうだ。

 その一方で通信事業者やシステム・インテグレータは,構内PHSの後継者として携帯電話/無線LANのデュアルモード端末を育てようとしている。ただし,今のところ期待どおりには成長していない。今回の調査でも,ユーザー数は18社にすぎなかった。そして不平・不満は,「端末の価格が高い」と「端末の選択肢が少ない」に集中している。

 ここにきて,期待の新人が姿を現した。KDDIがこの7月に出荷を始めた「E02SA」だ。ボーダフォンも,フィンランドのノキア製デュアル端末「Nokia E60/E61」を投入する。2004年発売のデュアル端末「N900iL」でこの市場を切り開いたNTTドコモも,ソリューション・サービスの拡充やN900iL後継機の開発に余念が無い。携帯電話/無線LANのデュアルモード端末は,PHS後継者の座を巡ったレースが始まる。

 このように,企業内モバイルを取り巻く環境は大きく変わろうとしている。これを機に企業内モバイルの導入を検討している方,導入済みだが次の一手を模索している方がいたら,9月13日に開催する「ネットワーク・ユーザー・フォーラム」に是非足を運んでほしい。企業内モバイルの先駆者が,構内PHSやデュアルモード端末のフル活用術を徹底解説する。そこにはモバイルならではの機動力を生かした,業務改善のヒントがあると思う。