小型で価値が高く,転売しやすい商品を世界中の男性や女性,子供に5000万個配って持ち歩いてもらったら,何が起きるか?当然,盗まれる。あるデータを紹介しよう。

 「ロンドンの無料新聞Metroの一面に『iPodが原因の犯罪が増加』という大見出しが載った。英国のテレビ局ITVは『泥棒がiPodユーザーを狙っている』と報じた。政府が,『英国全土における強盗事件の発生件数は,前年の9万8204件から8%増えて9万747件になった』と発表したためだ。内務大臣のJohn Reid氏は増加の原因を,『携帯電話機やMP3プレーヤなどの高価な商品を持ち歩いている若者』が(強盗犯にとっては)抗いがたいほど魅力的なためと述べている。英国内の犯罪に関する別の調査結果によると,強盗の発生件数は前年比22%増の31万1000件だった」

 この現象は驚くにあたらない。1990年代に高価なスニーカーを狙った泥棒が流行したのと同じく,驚くほどのことではない。それに今はノート・パソコン泥棒も流行している。

 どのような対策がとれるだろうか?基本的に,用心する以外の対策はあまりない。昔から,路上強盗(ひったくり)は犯人にとってリスクが低い犯罪なので,人々の持ち歩く物が高価になると発生件数が増えるのは当たり前だ。それに携帯用音楽プレーヤを持ち歩く人は,見間違えようのない目印――イヤホンを身に着けている。

 iPod泥棒を経済学の視点で考えると,以下に示した3条件のどれか1つが成立するまではなくならない。

・条件1:携帯用音楽プレーヤの価値が大幅に下がる

・条件2:犯罪のコストが大幅に上昇する

・条件3:社会が最下層の人々を適切に処遇し,iPod泥棒よりもよいキャリアの道を提供する

http://crave.cnet.co.uk/digitalmusic/...
http://www.educatedguesswork.org/movabletype/...

Copyright (c) 2006 by Bruce Schneier.


◆オリジナル記事「iPod Thefts」
「CRYPTO-GRAM August 15, 2006」
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◆Bruce Schneier氏は米Counterpane Internet Securityの創業者およびCTO(最高技術責任者)です。Counterpane Internet Securityはセキュリティ監視の専業ベンダーであり,国内ではインテックと提携し,監視サービス「EINS/MSS+」を提供しています。