仕様書は,複数のメンバーが共同で作成することが多い。したがって,コミュニケーションを怠れば,「仕様書間の不整合」や「保留事項の連絡不徹底による手戻り」などの問題を起こしやすい。こうしたリスクを避け, 効率的に仕様書を作成するには,どうすればよいだろうか。頻繁に起こる2タイプの実例を通して,その原因と対応策を考えていこう。

松田 陽人(まつだ・はると)
システム・エンジニア

 実質的な作業メンバーが1人というプロジェクトもあるだろうが,大半は複数のメンバーによる共同作業になるだろう。こうした現場では,仕様書の作成を複数人で分担して行う必要が生じ,プログラム間の仕様の調整に手間がかかる。

 これは設計工程全般に言えることではあるが,特に仕様書の作成フェーズでは,基本設計とは異なるレベルでユーザーと仕様の調整を行う。このため,より一層,コミュニケーションに注意を払う必要が生じる。

 それを怠ると,誰も気づかないうちに仕様書間の不整合が起きてしまい,後になって気づくという事態が発生しやすい(図1)。また,保留事項などの問題をプロジェクト内で周知徹底できないと,プログラミング工程に進んだ後,手戻りが発生する可能性もある。

 今回は,メンバー間のコミュニケーション不足に起因するトラブル例を二つ紹介する。仕様書の作成フェーズで,各メンバーが意識しておくべきポイントを考えていきたい。

図1●プロジェクト・メンバー間の意思疎通を欠くとトラブルに
図1●プロジェクト・メンバー間の意思疎通を欠くとトラブルに
コミュニケーション・ミスは,仕様書間の不整合や作業の手戻りに直結する