米Microsoftは9月に,開発ツール「Visual Studio 2005」のService Pack 1(SP1)を公開する予定だ。Visual Studio 2005 SP1では,ASP.NET 1.1アプリケーションをASP.NET 2.0に移行する作業が容易になるだろう。また,携帯デバイス用のSQL Serverなども付属する。詳細を説明しよう。

Visual Studio 2005を「2003相当」に戻すツールが含まれる

 筆者がVisual Studio 2005 SP1に興味を持ったきっかけは,MicrosoftのASP.NETチームが5月に,Visual Studio 2005に関するあるアップデート・プログラムをリリースことだった。これは,「新しい」ASP.NETプロジェクト・タイプ「Web Application Projects」を追加するものだった。

 ただし,このプロジェクト・タイプは,Visual Studio .NET 2003が使う.NET Framework 1.1のWeb Applicationモデルに基づいているという意味で,実際には「新しい」ものではなかった。Web Application Projectは,Visual Studio 2005の「Web Site Project」タイプと大きく異なる。Web Application Projectでは,Webアプリケーションは1つの大きな実行ファイルとしてコンパイルされる。Web Site Projectの場合だと,Webアプリケーションは,それぞれ独立した複数のコンポーネントで構成されるのだ。後者の構成には大きな利点がある。Webアプリケーション全体を再コンパイルしたり再転送することなく,それぞれのコンポーネントを容易にアップデートできるからだ。

 とはいえ,Visual Studio 2005にWeb Application Projectが加わることは,.NET 1.1から.NET 2.0への移行を容易にするだろう。Web Application Projectの実装は,Visual Studio .NET 2003のものと本質的に同じなので,開発者は親しみを感じるはずだ。しかしこれらの利点を考慮しても,Visual Studio .NET 2003のWebアプリケーションの挙動(例えば,コード全体を1つのバイナリ・ファイルにコンパイルすることなど)に後戻りすることが,本当に進歩につながるのか筆者には分からない。メンテナンスの観点から言うと,アイテムをそれぞれ個別にアップデートできるコンポーネントに分解する方法のほうが,はるかに優れている。

 Webアプリケーションを1つの実行ファイルにコンパイルする方法を好む人にとっては,Web Application Projectが開発環境に統合されるVisual Studio 2005 SP1は,存在になるだろう。SP1まで待てないという人は,MSDNのWebサイト「Visual Studio 2005 Web Application Projects」でアップデートをダウンロードできる。「Visual Web Developer 2005 Express Edition」を除くすべてのVisual Studio 2005が,Web Application Projectをサポートしている。Web Application Projectについてもっと詳しく知りたい方は,Scott Guthrie氏のWebサイトが参考になる。Guthrie氏は,MicrosoftのASP.NETチームに所属している。

携帯デバイス用SQL Serverが同こん

 次に紹介したいSP1のアイテムは,「Microsoft SQL Server 2005 Everywhere Edition (SQL Server Everywhere)」である。Microsoftは「SQL Server 2005 Everywhere エディション コミュニティ テクノロジ プレビュー の概要」という技術情報でこのアイテムを紹介してる。これは,Microsoftが9月にVisual Studio 2005 SP1の出荷を開始すると遠回しに発表した記事でもある。

 SQL Server Everywhereは,直感的な名前だった「Microsoft SQL Server 2005 Mobile Edition (SQL Server Mobile)「のブランドを変更したものだ。しかし同技術情報にも書かれているように,これは単なるブランド変更ではない。SQL Server Everywhereには新しい機能がいくつか含まれれているのだ。

 まず最初に,MicrosoftはSQL Server Everywhereを,SQL Server 2005やSQL Server 2005 Express Editionがなくてもデスクトップにインストールできるようにした。もっと重要なのは,SQL Server Everywhereのデータベースを含む「ClickOnceデプロイメント・パッケージ」が生成できるということだ(ClickOnceについては筆者のコラム「企業向けソフトウエア業界が迎えるパラダイム・シフト」をご覧頂きたい。

 Microsoftは技術情報の中で,SQL Server EverywhereはVisual Studio 2005 SP1だけでなく,「SQL Server 2005 SP2」にも含まれるとはっきり述べている。SQL Server 2005 SP2の存在に触れた同社の公式文書は,これが初めてである。