上流工程/開発プロセス

上流工程-RFP/提案

日経SYSTEMS

SEのための提案力強化講座【第1回】

なぜITエンジニアに提案力が必要なのか

提案に必要なスキルは何か

 提案は,組織活動において定常業務以外の新しい業務などを始めるために必要な手続きである。必要な経営資源の投入について,意思決定を促す手続きとも言える(図3)。これは企業組織にかかわらず,行政や企業など,あらゆる組織のいたるところで行われている。

図3●提案と提案力の定義
図3●提案と提案力の定義

 提案する相手が社内であっても社外であっても,「組織の問題や課題を解決するための戦略,施策を提案する」という本質的な目的は変わらないが,ここでは社外の顧客に提案する場面を想定して,提案に必要なスキルを解説する。

 提案活動は,新たなビジネス機会の拡大を目的に,積極的な商談獲得活動を展開していくなかで発生する場合と,既存の取引関係がある顧客からの依頼で提案する場合がある。また,別の企業からの要請で共同提案をする場合もある。いずれにしても顧客にとって価値のある提案をしない限り,商談として成立しない。こうした提案活動の基礎となるスキルは主に2つある。

 1つは,顧客に対面して提案を行うためのスキルである。提案書そのものの作成から,提案の実施(プレゼンテーション)までにどのようなことが必要か,基本を押さえる必要がある。具体的には,提案ドキュメントやプレゼンテーションの体裁を整えるための細かな知識やノウハウが必要になる。

 もう1つは,提案活動に必要なコミュニケーションのスキルである。「コミュニケーションは相手との会話」と矮小化して考えているITエンジニアが少なくないが,もっと広く深いものであり,提案の根幹を成す。

 提案活動は図4のような順序で行う。まず顧客の情報を聞き出すヒアリングがある。その情報を基に,意見交換や確認(ディスカッション)を行う。場合によっては提案する施策について,優先順位や品質レベル,コスト,納期などを調整する(ネゴシエーション)。次にネゴシエーションの結果を文書化する(ドキュメンテーション)。その文書に基づいて合意の定着化・決定をするのがプレゼンテーションである。さらに,次のステップに進んだり,プレゼンテーションで分かった課題の検討に進むこともある。

図4●提案活動のサイクル
図4●提案活動のサイクル

 提案というとプレゼンテーションを思い描くエンジニアが多いが,プレゼンテーションは楽譜でいうと最後の音符のようなものである。つまり,プレゼンテーション以前のヒアリングやディスカッション,ネゴシエーションといったコミュニケーション・スキルが重要なのである。このコミュニケーションが脆弱であれば,提案に盛り込むべき情報を把握できず,顧客へのインパクトの弱いプレゼンテーションになってしまう。

 だからこそITエンジニアが,商談の中で果たす役割は極めて重要になっている。顧客の真のニーズを見極め,最も適合した解決策を示さなければならない。そのためには,顧客の気付いていないことまで察知して提案する必要がある。そこにITエンジニアとしての本当の価値がある。

 顧客の言われたことをそのまま,オウム返しに提案するようでは値打ちがない。“便利な御用聞き”と見なされるだけである。これはITエンジニアでも専門の営業担当者でも同じで,顧客の言いなりになることはコミュニケーションのスキル不足に起因していることが多い。

 [2006/10/06]
出典:日経ITプロフェッショナル 2005年11月号  142ページより
(記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

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