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図3●提案と提案力の定義 |
提案する相手が社内であっても社外であっても,「組織の問題や課題を解決するための戦略,施策を提案する」という本質的な目的は変わらないが,ここでは社外の顧客に提案する場面を想定して,提案に必要なスキルを解説する。
提案活動は,新たなビジネス機会の拡大を目的に,積極的な商談獲得活動を展開していくなかで発生する場合と,既存の取引関係がある顧客からの依頼で提案する場合がある。また,別の企業からの要請で共同提案をする場合もある。いずれにしても顧客にとって価値のある提案をしない限り,商談として成立しない。こうした提案活動の基礎となるスキルは主に2つある。
1つは,顧客に対面して提案を行うためのスキルである。提案書そのものの作成から,提案の実施(プレゼンテーション)までにどのようなことが必要か,基本を押さえる必要がある。具体的には,提案ドキュメントやプレゼンテーションの体裁を整えるための細かな知識やノウハウが必要になる。
もう1つは,提案活動に必要なコミュニケーションのスキルである。「コミュニケーションは相手との会話」と矮小化して考えているITエンジニアが少なくないが,もっと広く深いものであり,提案の根幹を成す。
提案活動は図4のような順序で行う。まず顧客の情報を聞き出すヒアリングがある。その情報を基に,意見交換や確認(ディスカッション)を行う。場合によっては提案する施策について,優先順位や品質レベル,コスト,納期などを調整する(ネゴシエーション)。次にネゴシエーションの結果を文書化する(ドキュメンテーション)。その文書に基づいて合意の定着化・決定をするのがプレゼンテーションである。さらに,次のステップに進んだり,プレゼンテーションで分かった課題の検討に進むこともある。
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図4●提案活動のサイクル |
提案というとプレゼンテーションを思い描くエンジニアが多いが,プレゼンテーションは楽譜でいうと最後の音符のようなものである。つまり,プレゼンテーション以前のヒアリングやディスカッション,ネゴシエーションといったコミュニケーション・スキルが重要なのである。このコミュニケーションが脆弱であれば,提案に盛り込むべき情報を把握できず,顧客へのインパクトの弱いプレゼンテーションになってしまう。
だからこそITエンジニアが,商談の中で果たす役割は極めて重要になっている。顧客の真のニーズを見極め,最も適合した解決策を示さなければならない。そのためには,顧客の気付いていないことまで察知して提案する必要がある。そこにITエンジニアとしての本当の価値がある。
顧客の言われたことをそのまま,オウム返しに提案するようでは値打ちがない。“便利な御用聞き”と見なされるだけである。これはITエンジニアでも専門の営業担当者でも同じで,顧客の言いなりになることはコミュニケーションのスキル不足に起因していることが多い。