高年収の「御三家」は
コンサル、マーケ、プロマネ
まずは職種による年収の違いについて見てみよう。前年同様、平均年収の上位3職種はコンサルタント(710万円)、マーケティング(697万円)、プロジェクトマネジメント(645万円)だった。いずれもIT業界の人気職種である。ITエンジニアのキャリア設計において、年収が非常に大きな位置を占めていることは間違いなさそうだ。
各職種の平均年収を年齢層ごとに分けて見ると、25歳以下、26~30歳といった若い世代では職種間の違いがほとんどないことが分かる(図4)。唯一の例外がコンサルタントで、他職種より約100万円高い。これに対し、プロマネは30代になってから年齢とともに平均年収が高くなる傾向があり、 36~40歳と41~45歳では、コンサルやマーケティングと並び、他職種に比べて平均年収の高さが目立っている。絶対額は低いものの、エデュケーションにもプロマネと似た傾向がある。
年齢による年収格差が小さいのは、システム開発の実務を担うアプリケーションスペシャリストとソフトウェアデベロップメント。10歳離れた31~35歳と41~45歳で、平均年収の差が130万~150万円程度しかない。システムの運用や保守など各種サービスを担うオペレーションとカスタマサービスも同様だ。
同じ開発系でも、ITアーキテクトとITスペシャリストは年齢による年収格差が比較的大きいが、それでも36~40歳、41~45歳では絶対額がコンサルやプロマネより100万円程度低い。この結果について、40代前半のベテランITアーキテクトは「設計や開発に携わる職種に比べて、プロマネは大規模プロジェクトを計画通りに稼働させるので仕事の成果が分かりやすく、処遇面で評価しやすいのではないか」と話す。
年収格差が大きい御三家
対照的な開発系と運用保守系
スキルレベルと年収との関係を見てみると、スキルレベルはITスキル標準に基づいてレベル1~7、およびレベル1に達しない「未経験レベル」の8段階で評価した。これらをさらに、エントリレベル(未経験~レベル2)、ミドルレベル(レベル3~4)、ハイレベル(レベル5~7)という3つのレベル層に分けて、職種別の平均年収を集計した(図4)。
その結果、マーケティングやコンサル、プロマネといった職種は、レベルの違いによる年収格差が大きかった。これに対して、ITスペシャリスト、アプリケーションスペシャリスト、ソフトウェアデベロップメントの開発系3職種と運用・保守系の2職種は年収格差が小さい。
スキルレベルと年齢は相関関係が強いので、年齢層ごとに見た職種別の平均年収とスキルレベルごとに見た職種別の平均年収の結果が似るのは当然だと思える。しかし、年齢層ごとに各レベル層の平均年収を比べると、スキルレベルによる年収格差は確かに存在することが分かる。図5に示したように、エントリレベルでは25歳以下と41~45歳の平均年収が約260万円の違いなのに、ハイレベルでは約400万円も差が付く。ITエンジニアにとって、スキルレベルを高めることは処遇面でも大きなモチベーションになると考えてよいだろう。
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図5 年齢層ごとに見た、スキルレベル別の平均年収 年齢層が高いほど、レベルの違いによる年収の格差が大きい |
最後に、IT業界の年収について考察してみた。回答者の「現在の年収」を100万円刻みで聞き、各年収層の中央値を使って平均値を算出したところ、年収を答えた回答者(1万8419人)の平均値は548万円で、前年の調査結果の535万円からわずかながら増えた。
長時間労働に支えられているとはいえ、平均年齢34.0歳で548万円という年収は、他業界に引けをとらない。単純比較は難しいが、国税庁の「民間給与の実態」によれば、2003年度の民間給与所得者の年収は平均年齢43.5歳で444万円だったことを考えると、他業界より恵まれている。年齢層ごとに各年収層の構成比率を見ると、「500万円以上」の回答者は26~30歳では2割を切っているが、31~35歳で5割を超え、36~40歳では全体の8割近くを占める。1000万円以上の比率は高くないが、30代後半のほぼ30人に1人(36~40歳の3.1%)が“大台”に乗せている(図6)。
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図6 年齢層ごとに見た年収構成(カッコ内は平均年収と回答者数) 年齢層が5歳高くなるごとに、平均年収はほぼ100万円ずつ高くなっている。 [画像のクリックで拡大表示] |