◆今回の注目NEWS◆

◎平成17年度における行政手続きオンライン化等の状況(総務省、8月11日)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/pdf/060811_3.pdf

【ニュースの概要】総務省から、平成17年度のオンライン行政手続きの利用実績が発表された。個別の手続の状況など詳細も各省庁が公表している。


◆このNEWSのツボ◆

 総務省から、平成17年度のオンライン行政手続きの利用実績が発表された。その概要は、

国の申請・届出手続き……オンライン化実施率96%
 〃 申請・届出以外の手続き…… 〃 65%
 〃 申請・届出手続きの利用……オンライン利用率11.3%
独立行政法人の申請・届出手続き……オンライン化実施率98%
 〃 申請・届出以外の手続き…… 〃 74%
 〃 申請・届出の利用……オンライン利用率28.0%
地方自治体が扱う申請・届出の手続き……オンライン化実施率98%
 〃 申請・届出以外の手続き 〃 98%
 〃 申請・届出の利用……オンライン利用率11.3%

 全体として見れば、「準備はできたが、利用が少ない。これから頑張って利用を伸ばしていく」という感じである。しかし、同時に発表されている付属資料を見ると、その内容は、はっきり「二極分化」している。詳細が発表されているのは国の手続きに関するものだけだが、全体として「法人」が利用し、かつ、反復継続が多いため、電子化によるメリットが利用者側に多いと考えられるものでは、(ごく少数だが)利用率が半分(50%)を超える例も出てきている。「生命保険募集人及び変更の登録 」「船舶の入出港や貨物の扱い、輸出入申告」「法人対象の(毎月の)統計調査」などである。

 ところが、これに対して、個人や零細企業が利用するもの、或いは大規模法人であっても、利用機会が希なものでは、利用率が0%とか0.0何%といった例がほとんどである。

 つまり、電子化に向いた手続き、向かない手続きがかなり明確になってきていると言える。

 奇しくも、このコラムでも何度か触れた、外務省のパスポート電子申請システムが年内に停止されることが決定した。年間の運営コストが8億円超、パスポート一冊1600万円といった報道が目立っているが、実際には、国の方針に従って、既にシステムを実稼働させている自治体も多く(12県)、本当のコストは、さらに大きいと考えられる。

    【編集部追記】
    本コラム脱稿後の8月31日、外務省は「パスポート電子申請の停止について」を発表、「本年9月末をもって本システムによる申請受付を停止する」とした。(2006年9月3日)

 せっかく、ここまで実態調査が進んできたのだから、今後は、ただ闇雲に数値目標に向けて突っ走るのではなく、電子化に馴染むものについては、一層の資源集中・改善を図り、逆に、計画に掲げられたものであっても、今後の利用状況の改善が見込まれないものについては、思い切って「中止」ということがあっても良いのではないだろうか。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

東京大学経済学部卒。通商産業省(現 経済産業省)に22年間勤務した後、2000年7月に同省を退職。同年8月にコンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はウッドランド社長、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営コンサルティング、IT戦略コンサルティングまで幅広い領域で活動する。