イトーヨーカ堂とイオン、西友という大手スーパーマーケット3社が共同で、無線ICタグの実証実験を2006年2~3月に実施した。食品を対象にして、メーカーが出荷時にケースやパレットにICタグを張り付け、小売業者の共同配送センターと店舗における検品作業の精度向上と効率化を目指す。食品メーカーでは味の素とハウス食品、卸業者では国分と三井食品が参加し、小売りと一体になって実験に取り組んだ。

 鮮度の高い商品を欠品することなく店頭に提供し続けている日本の高度な食品流通システムにも、煩雑で手間とコストがかかる手作業が残っている。メーカーから商品を受け取り、店舗別に仕分けして配送する共同配送センターと、個々の店舗での検品作業である(図1拡大表示])。

図1 食品流通の流れとICタグによる検品作業【クリックすると拡大表示】

 共配センターではメーカーから商品を受け取る際、商品の種類や数を確認するだけなく、賞味期限などを目視で調べ、システムに入力する。この煩雑な作業には時間がかかり、入荷が集中すると配送トラックの列ができる。検品が終わるまでメーカーのトラックは帰れないため、「実際の検品作業は1時間で済むのに、10時間も待たされることがある」(業界関係者)という。メーカーにとっては、トラックの稼働率が悪くなる。

 共配センターは各店舗からの注文を受けて、カートラックと呼ぶカゴ車に仕分けして、指定された時間帯に商品を店舗へ配送する。カートラックは、店舗のバックヤードを兼ねる通路にそのまま置かれて保管庫としても使われるため、同じ種類の商品をまとめて載せたほうが、店頭への補充がやりやすい。このため、多くは卸業者が運営している共配センターは、注文された商品が置かれる通路別のカートラックに商品を仕分けする。このカートラックによる商品の誤配率は、1万分の1から10万分の1程度と低い。それを実現しているのが高度な自動倉庫システムと、最終的な人手による検品である。店舗にEDI(電子データ交換)で送信するASN(事前出荷通知)データは、人手の最終検品によって生成している。この出荷検品とASNの作成にも大きな手間がかかっている。