図6 決定事項を確実に実行するための会議後の2つのステップ
図6 決定事項を確実に実行するための会議後の2つのステップ
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図7 「議事録」シートの例<br>議事録は,単に会議内容を記録するだけでなく,決定事項の実施を促すのが大きな目的だ。そこで決定事項の実行方法や実行責任者,実行効果の検証方法などを明確に記述する
図7 「議事録」シートの例<br>議事録は,単に会議内容を記録するだけでなく,決定事項の実施を促すのが大きな目的だ。そこで決定事項の実行方法や実行責任者,実行効果の検証方法などを明確に記述する
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図8 参加者の役割と責任を明示する「役割分担表」&lt;br&gt;作業責任者や支援者といった会議参加者の役割や責任を決定したら,それをもとに役割分担表を作る。参加者全員の役割を明示することがポイントだ
図8 参加者の役割と責任を明示する「役割分担表」<br>作業責任者や支援者といった会議参加者の役割や責任を決定したら,それをもとに役割分担表を作る。参加者全員の役割を明示することがポイントだ
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図9 会議の成果を測る「検証シート」の例&lt;br&gt;会議で定めた,決定事項実行の期限が来たときに,きちんと実行されているかを検証する仕組みが必要だ。その仕組みの1つとして「検証シート」を作成し,会議の成果を書きとめるようにする
図9 会議の成果を測る「検証シート」の例<br>会議で定めた,決定事項実行の期限が来たときに,きちんと実行されているかを検証する仕組みが必要だ。その仕組みの1つとして「検証シート」を作成し,会議の成果を書きとめるようにする
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 実行責任者や支援者,チェックマンを任命したことから明らかなように,会議が終了したとしてもそれで終わりではない。

 何より必要なのは,(6)決定事項の実行プランと期限を記した議事録,および役割分担表を作成して参加者全員に公開し,(7)実行状況を検証するステップである(図6)。「議事録」は記録担当者が作成し,ファシリテータなどのチェックを経た上で公表する。作成時に注意すべきなのは,議論の過程は当然のこととして,決定・合意事項に関して「誰が・いつ・どこで・何を・どのように・どれだけ実行するか」(4W2H)が,一目で分かるようにしておくことだ(図7)。

 また会議で決めた各担当者の役割や責任は,分かりやすい形で一覧表にしておく。米PMI(Project Management Institute)が定めたプロジェクトマネジメントの基礎知識体系である「PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)」では,プロジェクトに関わるメンバーの役割と責任を明確にするために,責任分担表を作成することを薦めている。PMBOKの表を参考に会議でも実行責任者,支援者,チェックマン,情報提供者,実行内容の最終確認者などの役割を表にしておくとよい(図8)。これを参加者全員に配ることで,一人ひとりが責任を自覚し,互いの行動をチェックすることができる。

 一方,検証シート(図9)には実行状況や,実行できていない場合はその原因などを記述する。

 役割分担表と検証シートを照らし合わせると,誰が決められた役割を果たしていないかが,一目瞭然で分かる。筆者がコンサルティングを行うプロジェクトでは,会議の参加者が決められた役割を果たさないために決定事項を実行できないような場合は,一つの課題について何回でも仕切りなおしをし,その度に会議を開いてもらう。無駄が多いと思われるかも知れないが,「痛い思い」を重ねることで,参加者は確実に会議の決定事項に沿った行動をするようになる。

改革は困難だが効果は絶大

 いかがだっただろうか。従来の会議に慣れた人にとって,以上の会議の仕組みは,かなり面倒で窮屈なものに映るだろう。ただでさえ面倒な会議が,さらに面倒になると眉をひそめる人もいるかも知れない。

 だが生産性の高い組織や企業がこのすべて,あるいは多くを実践していることは,筆者の経験から断言できる。しかも準備やフォロー作業のほとんどは,ITエンジニアが専門とする「IT=グループウエアやイントラネット」を使って,効率良く実施可能であることは言うまでもないだろう。

 もちろんこうしたツールを使っても,従来型の会議に慣れた組織や企業を変えるのは容易ではない。特に多くのメンバーがファシリテータ役をこなせるようにするには,訓練が必要だし時間もかかる。実際,筆者のコンサルティング経験では,会議を含めたコミュニケーションを変革するために最低6カ月は必要だ。

 しかし会議を生まれ変わらせる効果は計り知れない。困難は伴うだろうが,できる限り早急に会議の新しい仕組み作りに着手して,その効果を実感して欲しい。







杉江 典昭(すぎえ のりあき)/ビス コーポレーション 代表取締役
米国のコンサルティング会社WEI&Aでの10年間の経験を基にHTT(Human Transformation Technology)を独自に開発し,97年ビス コーポレーション設立。ITベンダーを中心に人材教育を手掛けている。