合田俊文氏写真
合田 俊文(ごうだ・としぶみ)

富士通総研 第一コンサルティング本部 公共コンサルティング事業部 シニアマネジングコンサルタント

1985年富士通入社。以降、中央省庁、特殊法人、公益法人関係の情報システム構築作業に従事。1998年富士通総研に出向。公共コンサルティング事業部に属して、公共分野の業務改革、最適化計画策定支援、司法分野の情報化、海外の先進技術、企業調査などのテーマを中心に、中央省庁や地方自治体向けにコンサルテーション活動を行う。システム監査技術者。

 我々は普段の生活の中で法律や司法の利用を意識することはあまりないであろう。だが、例えば、家族や親戚、隣人、会社などとのトラブルが起こった場合や、日常の仕事を行う中で他者の権利や自己の義務などを正確に把握しなければならない場合など、法的な対処、即ち司法の利用の潜在的な必要性は大きいといえよう。

 一般的に司法はとっつきにくい存在と思われているが、ここ数年、その司法を大きく変えようという動き、即ち司法制度の改革が進んでいる。

 日本における司法制度改革の動きを簡単に振り返ってみると、2001年6月に司法制度改革審議会意見書が出された後、司法制度改革推進本部のもとで、裁判迅速化法の施行(2003年7月施行)、法科大学院の開学(2004年4月)、日本司法支援センターの設立(2006年4月)と続き、今後、2009年より裁判員制度の開始により国民が刑事裁判に直接参加することになり、司法はますます我々に身近なものとなってきている。

日本における司法制度改革の動き

 その一方で、司法分野のIT化はなかなか進んでいない。

 司法サービスの質を高め、基盤を充実させるためにはITの活用は欠かせないが、現実的には、司法の分野のIT化は欧米やシンガポール、韓国などの諸外国に比べても大きく遅れている。

 米国では、裁判の申し立て以降の手続きを電子的に行うe-ファイリングが発達しており、連邦レベルではAdministrative Office of the U.S. Courts(連邦裁判所事務局)が中心となってCM/ECF(Case Management / Electronic Case Files)という名称のシステムを整備している。2006年6月時点で、連邦レベルで84の地方裁判所と90の破産裁判所がe-ファイリングを行っている。

 北アイルランドのハイテク法廷については、立命館大学法科大学院の指宿信教授はブログの2006年5月8日の記事で、見事な写真を掲載しているので参照されたい(注1)。また、韓国ではインターネット裁判も行われている。(関連ニュース

(注1)その他、上述の指宿教授のブログには多くの司法のIT化に関わる話題が満載されている。

 e-Japan戦略は、「国のIT戦略」とうたっているが、実質的には行政が担当する分野のIT化であって、司法分野のIT化については触れられていない。その理由としては、立法・行政・司法の三権分立の中で、行政が主体として進めているe-Japan戦略の中に司法を取り込むことについてのある種の「ためらい」があることも否定できないだろう。