日経ソリューションビジネス

ITレポート(動向/解説)

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シンクライアントの新方式として台頭
クリアキューブ、日立、HPが三つ巴で競う

ブレードPC

 クライアントの情報漏洩対策として、ブレードPCが有力な選択肢に台頭しつつある。現在、商談で先行するのはCitrix製品に代表されるサーバーベースのソリューション。しかし、多くのソフトが稼働するといったブレードPCの優位点が浸透すれば、同じ市場規模に育つ潜在力を持つ。



 クライアントPCの機能を丸ごと1枚のブレードに納めた「ブレードPC」が、日本市場で出そろってから1年余り。本誌では、参入メーカー3社による2005年度の出荷台数を2万5000台と推計した。製品を供給する3社とは、2004年に日本に参入した米クリアキューブと、2005年5〜6月に相次いで製品を発売した日立製作所、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)だ。

 出荷台数が最も多かったとみられる日立にとっても、この実績は「想定よりはやや緩やかな立ち上がり」(BladeSymphony販売統括部の鳴川亨担当部長)と、物足りなさそうだ。しかし、市場が今後3〜4年で加速する潜在力は十分にある。

 というのも、顧客企業の大半は一部部署に限って製品を導入しており、その実力が理解されれば、企業内での導入台数が急拡大する公算があるからだ。メーカーも「この1〜2年は、実力を知ってもらう種まきの期間」(日本HPの筒井淳一CCIマーケティングマネージャ)ととらえている。実際に、日立の鳴川担当部長は「今年度は、既に製品を評価した既存顧客からの追加発注が多い」と語る。

ビジネスPCの5%がブレードに

 ブレードPCが日本で注目されるのは、ユーザー端末側にディスクを持たない仕組みが、情報漏洩対策に有効だからだ。対抗馬は「Citrix Presentation Server」や「WTS(Windows Terminal Services)」を使った、サーバーベースの“元祖シンクライアント”である。最近ではブレードPCを広義のシンクライアントソリューションに加え、同じ土俵で顧客に選択肢を提案している。

 出荷台数は、歴史が長いサーバーベース方式がまだ多い。ただし、浸透期間を経れば格差は縮まりそうだ。IDC Japanは2009年におけるブレードPC方式の出荷台数を約44万台と予測し、サーバーベース方式の47万台に迫るとみる。同年のビジネス向けクライアントPCの予測出荷台数が938万台なので、それぞれの方式がビジネス市場で約5%のシェアを占める計算だ。少なくとも、シンクライアント商談において、ブレードPC方式は欠かせない手駒になりそうだ。

 逆の見方をすれば、万能のシンクライアントは存在しない。ブレードPC方式に傾倒する日本HPや日立でも、シンクライアントの中に占める比率は現状で半分前後という。顧客企業ごとに最適解は変わるし、「同じ企業内でも、エンドユーザーの業務に合わせて、両方を混在させて提案するのが一般的」(日本HPの筒井マネージャ)だ。それぞれの利点を踏まえた、使い分けの提案を心掛けたい。

2方式があるブレードPC

 ブレードPC方式がサーバーベース方式より優れるのは、(1)PC向けソフトがそのまま動作する、(2)CPUを1ユーザーで専有できる、といった点だ。サーバーベース方式では、CitrixやWTS上でのソフトの動作検証が必要な上、負荷が大きいソフトは多数のユーザーで共有しにくい。

 ブレードPCにも2タイプがある。(1)画面やキーボードなどの入出力ポートをユーザー端末まで延長した「ユーザーポート型」、(2)サーバーベース方式のように、回線経由で画面の差分データなどを送る「画面転送型」――だ。

 ユーザーポート方式は、原則すべてのPC用ソフトが動作し、グラフィクス処理の負荷が大きいCADソフトも遅延なく動作する。しかし、ブレードの筐体からユーザーポートまでは専用の配線が必要な上、配線距離は200mと短い。画面転送型は、CADなどの苦手なソフトがある半面、通常のLAN/WANで接続でき、遠隔地でもユーザー端末を利用できる。

 ブレードPC方式とサーバーベース方式のユーザー単価を比べると、「利用者数が増えるほど、CPUのリソースを動的にユーザーに割り当てられるサーバーベース方式の方が有利」という意見が多い。

 ただし、ユーザーの利用形態で事情は大きく変わる。例えば、同じ時間帯にユーザーがPCを使い続ける職場では、サーバーを共有するオーバーヘッドがない分、ブレードPC方式の方が効率が高い。

 ほかの方式のシンクライアントにも注目したい。例えば仮想PC方式は、サーバー上に複数のWindows PCを仮想的に稼働させる。NECや、クリアキューブと提携した日本IBMが提供する。サーバーベース方式に近いが、多くのソフトが動作するブレードPC方式の利点を取り込んだことが特徴だ。

TCO削減や内部統制で訴求

 個人情報保護法の追い風があるとはいえ、セキュリティ以外の効果も組み合わせる提案の工夫は必要だ。10万円を切ったPCに比べれば、ユーザー単価は「シンプルな構成でも1.5倍以上」(日立の鳴川担当部長)とまだ高い。

 TCO(総所有コスト)の削減効果や、データを集中管理できる内部統制上のメリットを絡ませるのはその一手だ。ブレードPCの導入で最も削減できるのが、クライアントPCのトラブルや故障対応に要していたシステム要員の手間である。ところが、日本企業には「社内リソースはタダで使い倒せると考える文化が根強い」(IDC Japanの新行内久美シニアマーケットアナリスト)のも事実だ。こうした、ユーザーが意識していなかった人件費の削減効果を顕在化させる提案がポイントになる。

 また、ブレードPCの導入に合わせ、ITインフラ全体の設計も見直すことで、TCOを削減する提案も可能だ。「クライアントを集中配置できれば、メールやファイルなどのサーバーも削減できる」(日立システムアンドサービス オープンソリューション事業部の久保木満主任技師)からだ。

 業種や業務別では、設計情報の漏洩を防ぎたい製造業や、シンクライアント全般が好調な自治体・政府、クライアントPCの障害対策を講じたい医療機関や金融機関などで、実績が上がっている。

 こうした成功事例を横展開するために、2006年度はメーカー各社がパートナーの支援策に本腰を入れる()。

表●日本市場で販売されているブレードPC
*1:Consolidated Client Infrastructure *2:「セキュアクライアントソリューション」の一部として販売  *3:C/Portはユーザーポート型、I/Portは画面転送型の端末。このほかに、光ファイバーを用いて伝送距離を500m に延ばしたFiber C/Port、最大4 台のモニターを扱えるMulti-Video eXpanderも用意
メーカー 米クリアキューブ 日本ヒューレット・パッカード 日立製作所
製品ブランド ClearCube HP CCI *1 ―*2
製品 ブレード側 R1200、R1300など4種 bc1500 blade PC FLORA bd100
標準で用意する端末 C/Port、I/Portなど4 種*3 t5720 Thin Client FLORA Se330、同210
標準価格 C/Portで1クライアント約30万円、I/Portで約27万円から(日立システムアンドサービスの場合) bc1500 が12万6000円、t5720が6万9300円、ブレード20枚を搭載できる筐体が29万4000円、スイッチが30万4500円 bd100が13万5450円、Se330 が7万2450円、筐体が21万円。システム価格は 100 ユーザーで3300万円から
2005年度の推定出荷台数 1000台前後 5000〜7000台 1万8000台(自社導入分も含む)
販売強化策、パートナー支援策 年内に日本法人「クリアキューブ・テクノロジー」を立ち上げ。数人の常勤SE による、パートナーへの技術サポートを開始へ。現在の販売元は日立システムアンドサービス、インフォコム、NTTPCコミュニケーションズ、日本IBM 実績を持つ販売パートナーは10 数社。今秋にも技術スキルによるパートナーの認定制度を発足し、各パートナーのレベルアップを図る。スキル認定の対象は導入・運用に必要な「ActiveDirectory」やHP の管理用ソフト群など。当初の認定取得者は50〜100人が目標 まずパートナー自身による自社導入を促して、製品の特徴を訴求したり顧客の疑問に答えたりできるようレベルアップを図る。スキル認定制度の予定はない。シンクライアント全体で2006年度は8万台(うちブレードPCは推定4万台弱)の販売を見込む

 例えば、クリアキューブは年内にも日本法人「クリアキューブ・テクノロジー」を立ち上げ、日本での技術サポート体制を確立させる。日本HPはパートナーのスキルアップを図るべく、今秋に技術認定制度を設ける。各社とも、パートナー数の拡大より、積極的に取り組む現パートナーのレベルアップに注力する。




本記事は日経ソリューションビジネス2006年8月15日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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(玄 忠雄=日経ソリューションビジネス)  [2006/08/17]
出典:日経ソリューションビジネス2006年8月15日号  25ページ
(記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

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