Windowsは,簡単にファイルやプリント・サーバーにできます。これは,サーバーOSだけでなく,Windows XPのようなクライアントOSでも同じです。とはいえ,クライアントOSが完全にサーバーOSと同じように使えるかというと,そうではありません。いくつかの制約があります。

ライセンスで最大接続数に制限

 中でも大きい制約はライセンスです。マイクロソフトはWindows XPをクライアントOSと位置づけていて,ライセンス上,さまざまな制約を設けています。


図3 Windows XP Professionalをサーバーとして利用する場合の条件が使用許諾契約書に書かれている
使用許諾契約書は,\Windows\System32というディレクトリ内にeula.txtという名前で格納されている。
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図4 Windows XP Professionalをサーバーとして利用するには制約がある
最大でも10クライアントしか接続できない。利用できるサーバー・アプリケーションにも制約がある。
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 ライセンスの条項*は,通常はC:\Windows\System32にあるeula.txtというテキスト・ファイルに書かれています(図3[拡大表示])。これによると,「ファイルとプリンタの共有サービス,インターネット情報サービス,インターネット接続共有およびテレフォニーサービス」に限り,同時に10台までの接続が許可されています(Professionalの場合。Home Editionでは最大5台)。

 つまり,ファイル/プリンタ共有といった基本的なサーバーとして利用する場合には,Professionalで最大10台,Home Editionで最大5台までの同時接続という制限があります(図4[拡大表示])。この接続数はパソコンの台数でカウントするので,もし複数のパソコンを使っているユーザーがいた場合は,ユーザー数としてはもっと少なくなります。逆に,同時接続数が制限を超えなければ,合計で何台のパソコンから利用しても大丈夫です。

 ライセンスの文面にある「ファイルとプリンタの共有サービス」以外についても説明しておきましょう。

 「インターネット情報サービス」とは,インターネット向けに情報を提供するサーバーとしての利用です。Windowsが標準で備えるIIS*を使ったWebやFTPだけでなく,メール・サーバーなどのように独自のソフトをインストールして使うケースも含まれます。

 「インターネット接続共有」は,そのパソコンをインターネットへ接続し,ほかのコンピュータはそのパソコンをゲートウエイにして,インターネットへ接続する形です。これにより,NAT(ナット)*機能を持つブロードバンド・ルーターのような役割をパソコンで実現できます。

 「テレフォニーサービス」は,最近はあまり使われなくなった,モデムでの接続を共有するサービスです。そのパソコンをモデムで電話回線に接続して,複数のパソコンからその接続を共有する使い方です。

 これらの使い方をOSの標準機能で実現している場合は,最大接続数の制限を超えて接続しようとするとエラー・メッセージが表示されます。しかし,フリーソフトや他社製のソフトを使用していると,制限を超えてもメッセージが表示されないことがあります。メッセージが表示されなくても,同時接続数が制限を超えているとライセンス上では違反となるので注意して下さい。

規定した用途以外での利用は禁止

 では,ライセンスに書かれていないサーバー用途での利用はどうなのでしょう。実は,これらに関しては制限がないのではなく,マイクロソフトは使用許諾契約書に記述している用途以外での利用を禁止しています。

 例えば,通常のファイル共有や,インターネット情報サービスに含まれるFTPを使ったファイル・サーバーとしては利用できますが,それ以外のプロトコルを使って独自形式のファイル・サーバーを構築すると問題になることがあります。例えば,データベースと組み合わせた独自のファイル・サーバーやアプリケーションを搭載したサーバーは,Windows XPでは利用できません。


●筆者:山内 徹(やまうち とおる)
NECソフト ICTシステム事業部
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