◆今回の注目NEWS◆

◎「電子自治体オンライン利用促進指針」の策定及び同案に対する意見募集の結果 (総務省、7月28日)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060728_2.html

 総務省は「電子自治体オンライン利用促進指針」を策定した。策定に際して募集したパブリックコメントの結果なども合わせて公表した。


◆このNEWSのツボ◆

 「IT新改革戦略」(平成18年1月19日IT戦略本部決定)で、便利な電子行政の、代表的なターゲットとして掲げられている数値に「国・地方公共団体に対する申請・届出等オンライン利用率を2010年度までに50%以上とする」という項目がある。

《参考》「オンライン利用促進のための行動計画」 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/cio/dai19/19siryou16_02.pdf

 しかし、国・自治体のオンライン申請や入札の利用率が低いことも、良く知られているところである。そこで今般、総務省が「電子自治体オンライン利用促進指針」をまとめた。基本的には、「住民や企業ニーズの高そうな手続きを優先・重点化することによって、オンラインの利用率を上げよう」という作戦のようである。

 ところで、今回公開されたのは指針だけではなく、この指針の作成に当たって寄せられたパブリックコメントと、それに対する総務省の考え方も同時に公開されている。これが、なかなか興味深い。一つは、あらかじめ今回調査の対象(=オンライン申請の対象)から除外されているにも関わらず、住民票や印鑑証明などをオンライン申請の対象にすべきではないか…という意見が何通かあること。もう一つは、公的個人認証について、「止めた方がよいのでは…」という意見と「公的個人認証をもっと使ってもらうために工夫しては?」という意見がかなりあったという点である。

 このパブリックコメントを読むと、かなり行政電子化の状況について予備知識があると見られるものが多い。純粋な「利用者」の方の意見よりも、むしろ、自治体や関係機関などの現場で苦労されている方の御意見が多いのではないかと拝察される。

 そして、このパブリックコメントを裏から読むと、

  • (個人向けサービスとしては、今回除外されている)住民票の申請や戸籍、印鑑 証明などの方がニーズが高いのではないか?
  • 公的個人認証のあり方をよく考えないといけないのではないか?

 という意見が多いようにも見受けられる。

 これらの意見には「正面からの回答」はなされていないが、皮肉な見方をすれば、こうした意見を無視して走っても、結局「住民や企業ニーズが《高そうな》」サービスをピックアップするだけではないだろうか? 本当に「住民や企業のニーズの《高い》」サービスをピックアップすることにはならないのではないだろうか?

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

東京大学経済学部卒。通商産業省(現 経済産業省)に22年間勤務した後、2000年7月に同省を退職。同年8月にコンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はウッドランド社長、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営コンサルティング、IT戦略コンサルティングまで幅広い領域で活動する。