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こちらに非がなくても、相手に“逃げ場”を用意せよトラブル交渉編(第5回)■「交渉に勝つ」とはよく言いますが、お客様との交渉においては、それが商談であれ、トラブル交渉であれ、お客様を敗北に追い込むことは目的ではありません。特にトラブル交渉では、自らが負けずに、そして「相手にも負けさせない」ことが大事です。 (吉岡 英幸=ナレッジサイン代表取締役)
トラブル交渉では、お互いに深い傷を負いたくない。なんとか責任を回避して自分の傷は最小限にしたい。そのせめぎ合いだ。 こちらが「売り手」の立場であっても、それは同じだ。言いがかり的なクレームは当然のこと、こちらに責任のないことまで責めを負わされるいわれはない。冷静に責任の所在を明らかにし、主張すべきは主張して責任に応じた対応をする。それが原則だ。 ITにおけるトラブルというのは、障害にしろ、仕様変更にしろ、実は顧客側に非がある場合が意外と多い。「すわ障害だ」と、いきり立ってベンダーを呼びつけたら、顧客側がとんでもない運用をしていた、なんてことはしょっちゅうだ。 最初は平身低頭していたベンダーも責任の所在が明らかになるにつれて、だんだんと形勢逆転してくる思いで、いっそのことグーの音も出ないぐらいに反撃したくなる。まあ、実際そこまでいかないにしても、無理な要求は堂々と突っぱねたい。 しかし、トラブル交渉というのは繊細なものだ。こちらに非がなくても対応の仕方一つで、後々禍根を残すこともある。 「法廷に出た動かないコンピュータ」のように裁判沙汰になれば話は別だが、トラブル交渉のゴールは相手を負かすことではない。トラブルを乗り越えた後に、より良い関係を築くことがゴールである。 「負けた」と思わせないことが「勝ち」そのために大切なことは、相手に逃げ場を用意しておくことだ。相手に決して「負けた」と思わせないことが、ビジネスにおけるこちら側の勝利なのだ。 人は振り上げたこぶしをみっともなく降ろせないものだ。みっともなくこぶしを降ろすことを余儀なくなれた人は、やがてもっと恐ろしいキバを向く。矛は静かに鞘に収められないといけない。 土俵際まで追い詰めるが、あと一歩のところですっと足を引いて戻してやる。そうして相手に「借りができたな」と思わせるのだ。 たとえば急な仕様変更の依頼があった。先方は「こんなこと承認していないぞ」などと言う。しかし、レビュー会議の議事録を見ても承認した記録があるし、成果物の承認書にサインまである。何と言い訳しようが、先方に非があることは明らか。 そんなとき、「当方に責任はありませんから受けられません」と言うのはたやすい。 しかし、それでは先方担当者の立場がない。自分が蒔いたタネだから自分が上司に怒られようが、損失をかぶろうが、すべて自業自得というのは理屈だが、助け舟を出してあげることで、先方の顔が立ち、今後の関係が良好になるのなら、それに越したことはない。 「たしかに当方の責任によるところではないのですが、それでは課長もお困りでしょう。条件は考慮いただきたいと思いますが、なんとか対応を考えましょう」と土俵際で助け舟を出してあげるのだ。 勝者の寛容が勝者をより強く見せる明らかに負けたと分かった勝負を情けで救ってもらう。相手も背に腹変えられない。「そんな情けなんていらない・・・」なんてことは絶対言わない。地獄で仏と感謝するだけだ。 「助け舟」というのは,中途半端に責任を認めることではない。それでは相手に「勝った」と思わせてしまう。 あくまで冷静に責任の所在を精査して、こちらに非がないことを明白にしたうえで、つまり、いったん勝利者宣言したあとで譲歩してあげるのだ。相手から言えば、勝負には明らかに負けたが、判定で手心を加えてもらうようなものだ。 そうすることで、相手の自分に対する信頼はぐっと厚くなる。戦国武将でも攻め立てた相手を殲滅させずに、家臣に組み込み強大になっていた者が多い。トラブル交渉という戦場でも、寛容な勝者こそが強大な力を築くのだ。
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