アサヒビール 仁平進 執行役員業務システム担当
アサヒビールのCIOである仁平進
執行役員業務システム担当

 アサヒビールのグループCIO(最高情報責任者)を務める仁平(にへい)進・執行役員業務システム担当は、「当社はビールだけではない“総合酒類”戦略を推進している。複雑化する業務に対応して現場力を高めるため、IT投資を進める必要がある」と話す。

 仁平執行役員は、これまで人事、物流、営業など、幅広い部門で実績を積んだのちに、2005年9月にCIOに任命された。アサヒビールはここ数年、基幹情報システムの再構築を推進。2007年末までに、販売物流、財務・会計、生産など主要業務のシステム再構築が終わる見込みだ。CIOとしてシステムを考えるうえで、幅広い業務に目配せできる視点が役立っている。

 ビール系飲料はキリンビールとアサヒビールの上位2社が激しい競争を繰り広げる。アサヒビールは2006年5月に第3のビール「ぐびなま。」を投入するなど、攻勢をかける。

 ただし、ビールは「いろいろな酒類のなかで最も物流管理がしやすく、鮮度管理についても長年のノウハウの蓄積がある」。仁平執行役員の目は、他の酒類にも向かっている。例えば焼酎や洋酒は少量・多品種で流通するため、ビール系飲料に比べてきめ細かな物流管理が必要になる。地域によって売れ方が大きく違うなど、ビール系飲料とは違う販売傾向もある。

 「ビールと同じような営業の仕方をしていてもなかなか成果が出ない」。そこで、多次元データ分析(OLAP)ツールを導入し、販売実績データなどを地域別などでより細かく分析して営業活動に生かせる仕組みを作った。

 「部分最適ではなく、経営の観点からの全体最適を目指している。原価低減などの効率化も、ある程度まで進むと部門横断の取り組みでなければ効果が出なくなる」とも話す。このために、社内の情報共有を重視。「経営情報ポータル」を構築し、業態別の売上高、在庫、原価などの細かな指標を見られるようにした。他部門の指標も見られる。他部門の指標の動きなどを見て、問題点を相互に指摘するなど、部門横断での問題解決を促している。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
ITの持つ可能性や特性について理解していただくこと。

◆ITベンダーに対し強く要望したいこと、IT業界への不満など
我々ユーザーの業務革新に関する相談への対応を、コンサルタント任せにせず、ITベンダー自身でも幅広く理解し、提案できるようになっていただきたい。

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・日経ビジネス

◆最近読んだお薦めの本
・『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』夢枕獏著(徳間書店)
・『昭和史 戦後篇』半藤一利著(平凡社)

◆仕事に役立つお勧めのインターネットサイト
検索エンジン「Google」の特殊機能(http://www.google.co.jp/intl/ja/help/features.html、イメージ検索や電卓機能など)をよく使う。特に通貨換算が便利。

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
異業種の人が集まる勉強会には積極的に参加している。昔は勉強会をしていたが、今は普通の飲み会になっている「異業種OB会」もある

◆ストレス解消法
年2回程度の世界遺産巡り(直近ではインドのタージマハール)で心身ともにリフレッシュしている。