ノベルは7月19日,企業向けのLinuxディストリビューションである「SUSE Linux Enterprise 10」を発表した。サーバー用の「SUSE Linux Enterprise Server 10」(以下,SLES10)とデスクトップ用途の「SUSE Linux Enterprise Desktop 10」の2種類がリリースされた。

 SLES10の特筆すべき点として,仮想マシン実行環境である「Xen」を公式にサポートした事があげられる。そこで今回は,SLES10とXenを使って仮想マシンのセットアップを行い,その使用感を確認してみた。

SLES10の目玉は仮想化技術

 SLES10の最大の特長は,新たに仮想化技術を取り込んでいることだろう。特にメジャーな商用ディストリビューションとしては初めて,オープンソースの仮想マシン実行環境である「Xen」を標準のパッケージとして採用しており,ビジネス的にも公式にサポートされることになった。

 これまでは「Fedora Core 5」などがXenを標準パッケージに取り入れていたが,当然サポートのないディストリビューションであったし,XenSourceが公開しているソースコードやパッケージを導入するにしても,ビジネス用途でXenを利用するにはサポート不在が大きな課題だった。それだけに,今回のSLES10によるXenの商用サポートは,Xenの実用化に向けての大きな一歩と言える。

 SUSE Linuxの特長の一つとして,GUIで操作できる統合管理ツール「YaST2」(Yet another Setup Tool)の存在があげられる。システム設定にかかわる様々な作業を統一されたインタフェースで行えるのが大きなメリットだが,Xenによる仮想環境の構築・設定もYaST2から行える。

 現在の所,Xenの仮想マシン(DomainU)上での動作がサポートされているゲストOSはSLES10となっているので,今回はSLES10を使ったXen環境の構築から,仮想マシンにSLES10をインストールするまでの流れを追ってみる。

今Xenを試したいならSLES10評価版で

 SLES10の入手は,ノベルのWebサイトから60日間評価版を入手することができる。評価版のISOイメージは製品として購入する際のものとまったく同じとなっており,アップデートサービス(「Novell Customer Center」)を無償で60日間利用できるようになっている。今回の評価でSLES10を使えば非常に簡単にXen環境を構築できることが分かった(以前のレビューではFedora Core 5が良かったが,ランキングが交代した感じ)ので,とにかくまずXenを試してみたい人はSLES10の評価版をダウンロードしてみるといいだろう。

 実機へのインストールでは,特別変わったところはない。インストールするパッケージの選択であらかじめ「Xen仮想マシンホストサーバー」というパッケージグループをインストールしておくこともできるが,後ほどアップデートされたXenのパッケージを入れる必要があるので,初期インストール時の必須事項ではなくなっている。

 そのアップデート作業だが,インストール後システムが動き始めたらYaST2を起動し,[ソフトウエア]→[Novell Customer Center Configuration]を起動し,アップデートサービスサイトへメール・アドレスなどの登録を行おう(この作業自体はインストール作業中にも行える)。登録が完了すると,利用できるアップデーターが表示されるので,Xenに関係するパッケージがアップデート対象に含まれていることを確認しておく。

仮想マシン作成もGUIで楽々

 仮想マシンへのSLES10のインストールの方法としては,CDかDVDのインストールメディアから行う方法と,インストールサーバーを使う方法の2つが選択できる。さらにインストールメディアは物理的なドライブを使う方法と,ISOイメージを使用する方法が選択できる。

 とりあえずお試しであればインストールメディアを使うのが楽だが,起動やインストールに時間がかかる。仮想マシンへのインストールを何度も行うのであれば,最初にインストールに使用するファイルをすべてハードディスクにコピーする必要があるが,インストールサーバーの設定を行ってしまうとよいだろう。インストールサーバーではHTTP,FTP,NFSのプロトコルが使用できるので,他のマシンもネットワーク経由で利用することができる。

 今回はお試しということで,インストールメディアを使用してゲストOSをインストールしてみよう。