デザイナーが技術を身に付けてプログラマに歩み寄るには,開発環境をそろえ,開発ツールを使い,プログラムの基本を理解する必要がある。だが,意欲と気合だけでは,何から始めればよいかわからず立ち止まってしまうかもしれない。そこで,具体的な方法を指南しよう。今回は,デザイナーだけでなく,初心者プログラマにも有益かもしれない。

デザイナーも,開発環境を持とう

 まず,開発環境の整備から始めよう。次のものをチェックして,不足していたらそろえよう。参加するプロジェクトが得意とし,これまで多く手がけてきたプラットフォームに合わせた環境を作るのがベターだ。

・OS(Windows XP Professionalなど)
・プラットフォーム(.NET Framework2.0など)
・開発ツール
・データベース製品
・Webサーバー・ソフト(Webアプリケーションを,ローカルマシンで動作確認する場合に使用)
・完成したプログラムを配置するための通信ソフト

 本稿では上から順番に説明するが,開発ツールをインストールするだけでプラットフォームとWebサーバー・ソフトまで一気にそろう場合もある。

 OSやプラットフォームについては,プログラマと同じ環境を整備するのが望ましい。これはDTPにおける「フォントと,出力センターのフォントの関係」に似ている。

 逆に,パソコンのドライブやフォルダ構成は,動作確認の面からプログラマとは違うほうがよい場合がある。開発したアプリケーションを,開発者のドライブ構成とは異なる顧客のマシンやWebサーバーで動作させるよりも前に,ローカル環境で確認しておくことができるからだ。

 開発ツールについては,プログラマと同じものを強く推奨するが,予算面で難しければ同じツールの簡易版を探せばよい。簡易版なら,無償で入手できる可能性があるからだ。Webアプリケーションのビジュアル・デザインを設定したり,プログラム・コードを見たり,動作確認ができる最低限の機能を持つエディションでよい。例えば,プログラマがVisual Studio 2005 Professionalを使っているのであれば,Visual Web Developerを使えばよい。

 開発ツールだけでなく,データベース製品も必要だ。ベンダーのサイトをチェックして,無料か安価で入手できるものを探そう。例えばプログラマがSQL Server 2005を使っていたら,デザイナーは,SQL Server 2005 Expressをダウンロードして使えばよい。

 そして,自分のパソコンに動作確認のための環境も整えよう。開発途中のアプリケーションを,いちいち実運用のWebサーバーに配置して動作確認なんて面倒だ。1台のマシンに,クライアントと仮のWebサーバーの両方の役割を持たせよう。スタンドアロンのマシンでも何ら問題はない。

 ローカルマシンにWebサーバー・ソフトをインストールして,仮のWebサーバー(開発用Webサーバー)があると見立てた代役のフォルダ(ローカルホスト)に,開発したプログラム(サーバーサイド処理のWebアプリケーション)を配置する。ローカルマシンの中で,ブラウザからWebアプリケーションにアクセスすると,HTMLの形に変換されたページが表示される。実運用では,プログラムをWebサーバーに配置すると,サーバー側で処理された結果が,HTMLの形でユーザーに返される。

【図1】Webアプリケーションの処理

 このWebサーバー・ソフトは,採用する開発プラットフォームによっては,特定のOSのプリ・インストールマシンに付属していたり,開発ツールに付属していることもある。それらを利用すれば,別途入手する必要はない。開発ツールに付属しているWebサーバーなら,ツールが自動的にローカルホストを割り当ててくれるので,プログラムを配置するフォルダを意識しなくていいから,非常に簡単だ。ただし,プラットフォームやWebサーバーなどのインストール順序を間違えると,アプリケーションが動作しないこともあるから注意しよう。

 以上のように,デザイナーが,自分のパソコンにインストールした開発ツールを使ってWebアプリケーションのデザインを担当し,プログラマにロジックのコードを書いてもらい,自分のマシンで逐次動作確認をすれば,プログラミングという仕事がよく理解できるようになる。もちろん,コラボレーションの効率も飛躍的に上がるだろう。

 開発したアプリケーションがローカルマシンで問題なく動作したら,今度は実運用,あるいはプロジェクトでテスト用に立てたWebサーバーにプログラムを配置する*1。配置には,リモートデスクトップ接続*2や,遠隔操作ソフトを利用する方法もある。これらのソフトは,画像や音声などのデータファイルをアップロードする際にも便利だから,一度触れてみるとよいだろう。

 Webアプリケーションは,Webサーバーに配置しただけでは動作しないことがある。なぜなら,安全のために,プログラムやデータ・フォルダに対してのアクセスが禁じられているからだ。そこで,アプリケーションを動作させるには,アクセスの権利(アクセス権)の設定が必要となる。デザイナーが自ら設定を行う必要はないが,プログラマやネットワーク管理者が作業をする際に,その手順を一度見学しておく価値はあるだろう。

 開発環境がそろったら,次にしなければならないのは,開発ツールの基本操作と,開発結果として作成されるファイルについての理解である。例えば,次のようなことだ。

・プログラム・ファイルの種類と拡張子
・既存のプログラム・ファイルの開き方
・デザイン・コードとプログラム・コードの画面の切り替え方
・既存のプログラム・ファイルの動作確認方法
・異なるドライブ,異なるフォルダ構成のマシンで動作させたときに,エラーが生じた場合の解決方法
・新規プログラム・ファイルの作成方法。これはWindowsアプリケーション,Webアプリケーション,モバイル・アプリケーションなど開発方法によって異なる場合がある。
・ローカルマシンでWebアプリケーションを動作させる場合の,セキュリティ(アクセス権)の設定方法。
・プログラムからアクセスしやすい,データ・ファイル(画像,テキスト,XMLなど)の置き方(フォルダ構成やファイル名の付け方など)。
・遠隔操作ソフトやリモートデスクトップの使い方とパスワードの管理方法

 以上の環境整備の詳細については,コラボレーション相手のエンジニアに教えを請うといい(ちなみに筆者は.NET+XMLでの開発が専門で,ほかの開発環境に通じているわけではない)。数時間~1日もあれば理解できるだろう。教えてもらう際には,多忙なエンジニアに2度同じことを言わせないためにも,メモとICレコーダーをお忘れなく。