先日,久しぶりに出張がありました。北海道で取材だったので,往復は航空機。家族旅行などは別にして,国内出張で飛行機に乗ったのはたぶん10年ぶりぐらいです。パックツアーで航空チケットを代理店から渡される旅行以外では,飛行機に乗る機会がほとんどなかったわけです。

 よくあることですが,出張前には仕事が集中し飛行機の予約などになかなか気が回りませんでした。数日前になって,外出先で「もしかして席がヤバイかも」と気付き,携帯電話で航空会社のケータイサイトを慌ててチェック。かろうじて席が残っていたので,とりあえずはホッとしました。

 時間的な猶予もあまりなかったので,その場で携帯電話を使い「買っちゃえ!」。携帯電話向けのサービスの記事などはずっと書き続けてきましたが,実際に飛行機の予約をするのも初めてなら,決済なんてもってのほか。それでも画面に従って航空会社のマイレージ会員番号やクレジットカード番号などを入力していきました。すると,座席予約もできて,「チケットが買えた」ようです。

 その後,購入手続き完了のメールが届き,購入済み状態になったことは分かりました。出張などで飛行機に乗り慣れている皆さんの中には,携帯で予約してチェックインするなんて当たり前という方も多いでしょう。しかし,初体験の私は,買うまででもドキドキでした。

 でも,ドキドキはそれだけでは済みませんでした。私の携帯電話はモバイルFeliCa対応の「おサイフケータイ」です。航空券の代わりに携帯電話でチェックインもできるはずです。この辺は取材をしたことがあるので「知識」としては知っています。しかし,「○×チェックイン」とか「チケットレス△◆」とか,いろいろな用語が飛び交う携帯電話の小さな画面をいくらながめても,どうすればいいのか確証が持てませんでした。初めての経験ばかりで,戸惑ってしまったのです。

 ケータイサイトを探し回っても,Webサイトを見ても,○×チェックインの仕組みや,空港でどうすべきか,今ひとつよく分からないまま当日になりました。結果は案ずるより産むが易しで,自動チェックイン機におサイフケータイをかざしたら,それだけで搭乗券が発券されました。ちょっと感動しながら,飛行機に乗れる実感がようやく沸いてきたわけです。

小さな画面で情報を伝えるには

 携帯電話の画面が,メールやWebサイトの窓口になってずいぶんと時間が経ちました。情報を閲覧するだけではなく,予約や購入などに活用する人も多いことでしょう。今回,航空券の予約・購入からリアルな空港でのチケット受け取りまでを体験して,ケータイサイトでの情報提供が「初めての人には必ずしも親切ではないな」という感想を持ちました。

 その要因の一つは,画面サイズの制約と,そこに表示する情報にあると思いました。例えば,パソコン用のWebサイトのように,いっぺんに多くの情報を見せられないことです。複数の情報を並べて表示できないため,ページ遷移が多くなって,多くの処理が必要な「購入」などでは混乱しがちになります。

 さらに,小さな画面に出す情報の表現も気になりました。「お客様」を相手にするコマースサイトでは,ぞんざいな言葉遣いは許されないでしょう。しかし,小さい画面では回りくどい言い方だと感じることもありました。一方で,先の○×チェックインのような専門用語の意味が混乱してしまった場面もありました。要するに,もっと簡潔に分かりやすい表記であってほしかったのです。

 出張で出向いた北海道テレビ放送で,これに関連した話を聞きました。コンテンツ本部 編成戦略センター付局長 兼 クロスメディア編成・事業グループの吉田 元さんの話です。デジタルテレビやワンセグにはデータ放送があり,さまざまな情報を文字で伝えています。その際に,新聞など活字メディアで培った「見出しを付ける」「簡潔にまとめる」能力が必要になるというのです。特にワンセグのデータ放送は携帯電話の小さい画面だから,なおさらです。

 なるほど,データ放送であれ,ショッピングサイトであれ,携帯電話の小さな画面で「どんな情報があるのか」「何をすべきか」を伝えるには,コンパクトに情報をまとめて文字にする“技術”が必要なのでしょう。では実際にケータイサイト作成者は,そうした技術を持ち,文章の推敲をしているでしょうか。次から次へと処理を進めるために,じっくり検討する余裕がないケースが多いのでは,という想像は当たらずとも遠からずだと思います。

 文字数制限が厳しかったころの携帯メールでは,短い文字数で状況や気持ちを伝えるために,文章を推敲することが多くありました。それにならって商用のケータイサイトでも,少ない文字で的確に情報を伝えるために,もう一段の推敲や言い回しの検討をしてもらえたらと思います。空港でチケットを受け取るまで一抹の不安を感じ続ける,私のようなユーザーが少しでも減るように…。