経済関係の記事で、ステークホルダーという用語を目にする機会が増えてきました。通常は、利害関係者と訳されますが、具体的なイメージがわかないという方が少なくないでしょう。実は、「CSR(企業の社会的責任)」を理解するには、まずステークホルダーとは何かを理解する必要があります。

 CSRを一言で表現すると、「自社のステークホルダーのそれぞれに対して、期待される責任を果たすこと」となります。そして、ステークホルダーは一般に、「株主や従業員、顧客、取引先、地域住民など」と説明されますが、この「など」に何が含まれるかは判然としません。

 ステークホルダーを「その人や組織からの支持や協力がなくては、自社の事業が成り立たなくなるもの」と理解すれば、CSRも理解しやすくなるでしょう。すなわち、「事業を継続するために、自社を取り巻く人や組織に支持や協力を取り付ける取り組み」がCSRなのです。

◆効果
企業価値にも影響

 概念が広いだけに、CSRの具体的な取り組みは多岐にわたります。例えば、消費者の期待に応えて安全な商品を提供することや、地域住民に向けて環境に配慮した生産活動を行うこと、従業員のために働きやすい職場環境を作ることなどが含まれます。

 このほか、コーポレート・ガバナンスや内部統制に関する取り組みも、CSRに含まれまる重要な要素です。業務を効率化したり、不正を防ぐことは、従業員の期待に応えることになるし、また、株価対策にもなるので株主に向けた取り組みだともいえます。

 最近、投資家の間で「CSRを意識した企業ほど発展性がある」という考え方で投資対象を選別する動きもあります。こうした手法は、SRI(社会的責任投資)と呼ばれ、投資信託の銘柄選定にも採用されています。CSRに取り組むことは、企業価値を高めることにもつながります。

◆事例
CSR報告書を発行

 CSRに取り組む際に欠かせないのが、ステークホルダーとのコミュニケーションです。いくらステークホルダー向けの活動を実践したとしても、それが伝わらなくては、期待に応えたとはいえません。

 上場企業の多くがコミュニケーションの一環として、決算時に財務諸表に加えて、CSR報告書を開示しています。従来の環境報告書を強化して、CSR報告書として発行する企業が急増しています。

 例えば、花王は2005年3月期に、従来の「環境安全・社会報告書」を改めた「CSRレポート 2005」を発行しています。この報告書は、写真や図をふんだんに使って、同社の取り組みを分かりやすく解説したもので、総ページ数は69ページもあります。