ソニー生命保険 嶋岡正充常務取締役
ソニー生命保険
嶋岡正充 取締役 執行役員 常務

 1990年代に保険販売スタッフにいち早くノートパソコンとデータ通信用に携帯電話を装備させるなど、IT(情報技術)活用の先進企業として知られるソニー生命保険。

 同社で経営企画部・カスタマーリレーション企画部 業務プロセス改革本部を担当する嶋岡正充 取締役 執行役員 常務は、IT戦略立案の猛者だ。嶋岡氏が実質的にCIO(最高情報責任者)としての役割を最初に担ったのは、今から8年前の1998年4月までさかのぼる。

 その後、嶋岡氏は2001年度から2年強にわたりIT関連業務からいったん離れたが、再びCIOに就任して2004年度から新規システムの開発を積極的に手がけるようになった。2005年度からは次期基幹システムの開発に着手し、2010年の完成を目指す。嶋岡氏はこのプロジェクトを「自分にとって4つ目の大きな挑戦になります」と言う。

 嶋岡氏は日ごろから、「人が一生のうちに成し遂げられる大きな仕事は4つか5つしかない」と思っている。そういう視点で人生を俯瞰(ふかん)すると、挑戦意欲がふつふつと沸いてくるのだという。

 嶋岡氏の1つ目の大仕事は、かつて在籍していた石油会社において若手ながらも大きな開発を任されたこと。2つ目は、ソニー生命保険に転職して90年代に次々と新システムを導入したこと。3つ目は経営の一角を担うようになったことである。これらの中でも2つ目の大仕事を成し遂げたことが、特に大きな自信となっている。

 「石油会社では当時、日本でトップクラスの先進的なシステムを扱っていました。しかし、敷かれた路線を走っている感じがつまらなかった。ゼロから走ってみたくなったのです」

 「ソニー生命保険ではそのころシステムは何もないに等しい状態。次々と新システムを導入し、1990年代後半には新聞や雑誌などでIT先進企業として取り上げてもらえるまでになりました。大きな原体験です」

 そんな嶋岡氏が2004年度から知恵をしぼり続けていることがもう1つある。成熟企業となりつつあるソニー生命保険の組織力をどう強化していくかだ。

 会社が大きくなるのに伴って、組織の壁が高くなり、組織そのものが自己目的化してきていると感じる。このような状況では、顧客本位のシステムを作るのは難しい。顧客と直接触れ合う現場にとって有意義なシステムをいかにして開発していけばいいのか。現場とのコミュニケーションを深めたり、経営品質活動をしたりして、その答えを模索し続けている。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・私がきちんとIT部門を掌握していると思われるような信頼関係を得ること。そのためには情報をブラックボックスにしないことが基本です。もちろん、ITの問題を経営の視点で伝えることも重要です

・ITの特性をきちんと理解して、資金を投じるべきところにはきちんと投じると主張することも大切です。表面を取り繕ってコスト削減に走ってしまうと、いずれIT部門が弱体化していきます

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・この前の決算期のころに思ったことですが、ITベンダー自身の経営レベルの話について、もっとお互いにコミュニケーションをとってもいいのではないでしょうか。システム開発を発注する際、単価はいくらなのかとか、それはやれるのかやれないのか、といった話がなかなかできないのが現状です。ITベンダーの経営戦略や経営課題の話もできれば、もっとより良い関係を築いていけるような気がします

・「うちは何でもできます」と言うITベンダーが大半で、本当は何が得意なのかが分かりにくい。もっとITベンダー各社に色があるとうれしい。そうでないと、結局はITベンダーの担当者を評価するみたいな事態になりかねないからです

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・読売新聞
・日経情報ストラテジー
・ニューズウィーク。日本にいながらにしてグローバルに起きていることを見ると、日本の現状について深く見えてくる部分があるので読んでいます
・ハーバード・ビジネス・レビュー

◆最近読んだ本
・養老孟司氏の『超バカの壁』(新潮社)。結局は肌感覚が重要なのだと感じました
・JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の『システム・リファレンス・マニュアル』(JUAS出版)。これは傑作です。情報システム全般のマニュアルとして、特にCIOの方にお勧めです

◆仕事に役立つお勧めのインターネットサイト
日経テレコン
nikkeibp.jpが発行しているメールマガジン。いろんなサイトや情報にリンクされていて便利です

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
JUAS(日本情報システムユーザー協会)の活動をいまは重視しています

◆ストレス解消法
・土曜日にテニスをしたり楽器を演奏したりします。ピアノやマンドリンを弾くのですが、特に左手を使うことが右脳を活性化させるのに効くように思います。マンドリンは、昔ギターをやっていたのでそれを復活させたようなものです。最近地元で先輩が主催するマンドリンクラブで演奏しました。また、中学校でテニス部に在籍している息子ともテニスをしてコミュニケーションを深めています

・買い物が好きで、夫婦で一緒によく出かけます。これもすごくリラックスできることですね