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連載 Web 2.0時代のソフトウエア開発手法

第16回 ニコニコ・カレンダでチームの士気を見える化する

2006/07/27 ITpro

 「ニコニコ・カレンダ」(以下ニコカレ)は,組織/チームの士気やメンバーの気持ちを見える化するツールである。元はソフトウエア開発のプラクティスとして使うものだが,ソフトウエア開発以外でも利用できる。TRICHORDも,画面にニコカレを表示したり入力したりする機能を実装している(図1)。


図1 TRICHORDでニコニコ・カレンダを表示したところ
3色の顔のマークが各メンバーのその日の気分を表す。気分と色との対応は,Good=黄,Normal=赤,Bad=青,である。

[画像のクリックで拡大表示]

 プラクティスの内容は簡単だ。チーム・メンバーの名前を記したカレンダ上に,一日ごとの自分の気分を,シールの色(Good,Normal,Bad)とシールに描く顔の絵柄で表現して台紙に張っていくだけである。気分とシールの色の対応はチームによって異なり,よく使われるのはGood=黄,Normal=赤,Bad=青である。詳しくはニコカレの解説サイトを参照してほしい。

 ニコカレは遠目で見るだけで,色の分布からチームの大体の状況が分かるようになっている。さらに,近くに寄って見ると,個々の微妙な表情の違いも分かる。もし,色が3段階ではなく10段階になれば,より細かい表現ができるかというと,そうとも言えない。3つという単純な分類だからこそ,簡単・気楽に気分を表現できるのだ。3つの分類では表現できないニュアンスはシールに描く顔で表現すればよい。このように,デジタル(3つの気分)とアナログ(顔を描く)の両方をうまく組み合わせたところにニコカレの価値があると言えるだろう。

 ニコカレは,今までリーダーやマネージャが開発者に報告書を提出させたり,進ちょくをヒアリングしたりしただけでは表に出てこない,より内面的な,開発者個人の気分が外に現れるように仕向けることができる。情報をプルするのではなく,開発者自身がプッシュする点がニコカレの特徴だ。作業レポートのような形でも開発者がプッシュすることはできるかもしれない。しかし実際そこに個人の気分を埋め込むのに抵抗を持つ人は少なくないはずだ。一方,ニコカレなら自分の気分を正直に表現しやすいのではないだろうか。このニュアンスの違いは,メーリング・リストにメールを出すのと,ブログにエントリを追加することの違いに近いとも言える。

 TRICHORDチームでは,最初はプラクティス通りに台紙を壁に張り,シールを毎日張って顔を描いていた。色は3種類しかなくても,シールに描く顔の表情が微妙に違うので,個々のメンバーの細かい気分がよく分かった。ただ,こうした壁にシールを張る方法は,その場にいるメンバーしか見えないという欠点がある。TRICHORDでニコカレをサポートしたのも,こうしたアナログ・ツール故のプラクティスの限界に気が付いたのが理由の一つだ。もちろん,それ以外に「人の気分のような側面も,プロジェクトの状態の一部である」という考え方に基づいていたこともある。

 TRICHORDのニコカレ機能は,あらかじめ用意した3種類のマークからその日の気分を選ぶだけで,顔の表情を細かく描く/指定するような仕組みは備えていない。その代わり,補足情報として「その日の一言」を付加できるようにしている。実際に日々TRICHORDを使っていて分かったのは,この一言が実は非常に大きな意味を持つことである。一言に書いてある内容は,個人の一行日記と同様である。短いが故に,その日の仕事の内容や,その日にあった出来事を端的に表現しているのだ。

 今のご時世なら,チーム内でブログを書くことに挑戦しているプロジェクトもあるだろう。しかし1日たりとも休まずにブログを書くのは,たとえ「やると決まっていること」でも難しい。対してニコカレ+一言ならば,続けることは容易だ。しかも情報量としては少ないものの,あとで過去を振り返ったときに,その日の記憶をよみがえらせるのに十分なトリガーとなる。加えて,このように開発者自身が一言を入れることによって,ほかのメンバーの気分と一言をチェックする習慣も付く。口や顔には出さなくとも,実はあるメンバーの調子が悪かったり,つらく感じていたりという事実を発見できるのだ。

 またニコカレを毎日見ている管理者は,タスクの進ちょくなどに現れないチームの生の状況を常に把握できる。実際,TRICHORDチームのプロダクト・オーナーは,地理的には離れてはいるものの,過去二週間のチームの状況から各メンバーの気分まできちんと把握している。ネットワーク経由でTRICHORDチームのニコカレを毎日見ているためだ。

 ニコカレは,メンバーがその日の気分を記録していくことで,自分の気分を視覚化する。個人の気分が集まると,単なる気分の集まりではなく,チームの士気となる。チームの士気の見える化は,プロジェクトを「ヒト」という視点で見える化する際の1つのアプローチである。

 個人の気分を外界から完全に制御するのは不可能だ。しかし,見える化することで,悪い方向へと進み続けないように働きかけることはできる。制御できない気分の「変化を抱擁」(Embrace Change)しつつ,フィードバックを与えながらうまくやっていく。これがニコカレを使ううえでの最大のポイントである。

 次回はTRICHORD開発チームのニコカレを題材にして,チームの士気の読み方と,ニコカレの注意点について解説する予定だ。

懸田 剛

チェンジビジョンでプロジェクトの見える化ツール「TRICHORD(トライコード)」の開発を担当。デジタルなハックと,アナログなハックの両方を好む。新しいやり方やツールを考えるのが好きである。個人サイトは http://log.giantech.jp/

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