問10. TCP/IPネットワーク上にWindowsサーバーを置いてファイルを共有している。「マイネットワーク」からマウスでアイコンをたどっていくとサーバーのアイコンが表示されるのに、そのアイコンをダブルクリックしてもエラーが出て接続できないというトラブルが発生した。以下の対処法のうち、ファイル・サーバーにアクセスできない原因を調べるためには役立たないと思われる作業はどれか。以下の選択肢から一つ選びなさい。

[選択肢]
a. nbtstatコマンドでマスター・ブラウザとなっているWindowsパソコンを確認する
b. nslookupコマンドでDNSサーバーに相手の情報が登録されているか確認する
c. pingコマンドでIPレベルで相手と通信できるかを確認する
d. 接続に使っているユーザー・アカウントがサーバーに登録されているかを確認する
e. サーバーの共有フォルダに設定しているアクセス権を確認する

[解説]
 正解は,選択肢aの「nbtstatコマンドでマスター・ブラウザとなっているWindowsパソコンを確認する」です。

 企業ネットワークにおいて,Windowsのファイル共有機能を使ってファイルをやりとりするケースは一般的でしょう。Windowsネットワークの最大の特徴は,「マイネットワーク」や「ネットワークコンピュータ」からマウスで操作していくとサーバーや過去に利用した共有フォルダの一覧が表示される点です。この特徴のおかげで,サーバーの名前を正確に覚えていなくても,だれでも簡単にネットワーク上のサーバーが利用できます。

 この一覧表示を実現するのは「ブラウジング」と呼ばれる機能のおかげです。表示したアイコンをクリックすればすぐにサーバーを利用できるため,実際にサーバーにアクセスする機能とブラウジング機能とは,一見密接に連携しているように見えます。ところが,実際にサーバーにアクセスする際には,ブラウジング機能はまったく関係しないということを理解するのが,この問題のポイントです。このため,nbtstatコマンドを使って,ブラウジングの情報を管理しているマスター・ブラウザを探しても,ファイル・サーバーにアクセスできないという現象の解決には役立ちません。

 TCP/IP上でWindowsネットワークのファイル共有をしている場合,サーバーのアイコンをダブルクリックすると,そのサーバー名を使ってネットワーク上で名前解決をし相手のIPアドレスを調べます。このときにブロードキャストだけで済むこともあれば,DNSサーバーで相手のIPアドレスを調べることもあります。このため,nslookupコマンドでDNSサーバーの情報を確認すれば原因がわかることがあります。

 名前解決でIPアドレスがわかったWindowsパソコンは,今度はそのIPアドレスにファイル共有の要求を出します。この要求が相手に到達しない場合もファイル共有には失敗します。このため,pingコマンドを使って相手とIPレベルで通信できているかを確認することも,今回のトラブルの原因を調べるために役立ちます。

 IPレベルでファイル共有の要求が無事に到達すると,今度はサーバー内でその要求が適切なものかを判断して処理します。適切なユーザーからの適切な要求ならば,きちんと処理して相手に返答します。もし,不適切なユーザー・アカウントからの要求や,アクセス権のない共有フォルダへの要求ならば拒否して,やはりエラーを返します。このため,サーバー上でのユーザー・アカウントの状況を確認するのも,原因を調べるためには重要な作業です。