台湾High Tech Computer(HTC)のピーター・チョウCEO兼プレジデント
台湾High Tech Computer(HTC)のピーター・チョウCEO兼プレジデント
[画像のクリックで拡大表示]

 台湾HTCはNTTドコモが7月末に出荷したスマートフォン「hTc Z」の開発元。hTc ZはNTTドコモが投入した初のWindows Mobile搭載端末である。この端末によって日本初進出となる台湾HTCは,日本の携帯電話市場をどう分析し,どのような展開を描いているのか。ピーター・チョウCEOに聞いた。(聞き手は大谷 晃司=日経コミュニケーション

――日本市場をどう分析しているか。

 日本市場への参入機会があると感じたのは4年から5年ほど前。ただし,当時の日本市場ではPHSもかなり使われており,また第3世代携帯電話(3G)への移行に苦労していた時期。当社としてもまずは3Gの技術を確立してから日本市場に参入した方がいいだろうと判断し,タイミングを見計らっていた。そして今が好機だと判断した。

 現在,日本の携帯電話市場自体はかなりの飽和状態にあると理解している。ARPU(1加入者当たりの平均月間収入)や加入者の伸びも,厳しい状態だと認識している。また,日本の事業者は収益を伸ばす新たな道筋を探していると思っている。ここに当社の役割がある。ヨーロッパや米国でビジネスをしてきた経験から言えることは,電子メールなどを含めてWindowsをベースに統合したデバイスが事業者にとって興味を引くものとなっている,ということだ。

 日本にもパソコンのユーザーは当然多い。そうしたユーザーは,オフィスの環境を他の場所にも拡張したいと思っているだろう。そこでWindows Mobileを使った携帯端末を世界で最初に市場投入したHTCの技術が役に立つだろう。

――日本での販売目標は。

 正確な販売予測を立てるには時期尚早だと考えている。今回は1製品だけの導入だが,この製品だけで事業を続けるわけではない。日本法人を設立したのは,複数製品を市場に投入することを視野に入れているためだ。

 これらを含めて,2007年末までには少なくとも数十万台は販売したい。社内では野心的な目標として100万台という数値を示してはいるが,50万台くらいは販売したいと考えている。

――今回投入する「hTc Z」をドコモでなくHTCブランドで販売する理由は。

 あくまでもhTc ZはNTTドコモの製品。ただしHTCの名前を使うことによって,サポートに関して当社が大きな責任を負うことになる。NTTドコモの名前を冠していればすべてがドコモの責任となるが,HTCの名前を冠することで端末に対して当社が責任を持つことになる。責任分担などもNTTドコモと取り決めている。

――NTTドコモ以外の事業者から端末を出す予定はあるか。

 すべての事業者から出せればいいとは思っている。今はまだ日本市場のことを学んでいる段階。当社は最先端のテクノロジを持っていると自負しており,他の事業者との提携の機会の可能性は十分にあると考えている。新しい機会に対してはオープンな気持ちで望む。

 htc z以外の端末の日本市場投入については,2~3機種検討している製品はある。だがこれもまだ話をできる段階ではない。パートナー企業の計画もあるので,開示できないことを理解してもらいたい。

――個人向けに販売する計画は。

 当面はない。とはいえ,欧米では当社製品ユーザーの50%はコンシューマという状況。日本市場への製品投入当初はやらなければならないことがあまりにたくさんあるので,法人向けに焦点を絞って質を高めていく。だがコンシューマ向けにも販売したいという希望は持っている。実際2007年12月末までの売り上げ目標の数値は法人だけでなく,コンシューマも含めて考えている。

――日本法人の機能について教えて欲しい。

 4月に設立した日本法人は,営業,マーケティング,さらに技術サポートの部隊を持つフル機能のオフィスとなる。顧客が必要とする品質レベルを維持し,企業向けのカスタマイズなども含めて担当する。

 日本法人には研究開発の機能は持たないが,何が日本市場にとって重要かを見極める担当者,つまり商品企画の担当者は配置する。日本の市場や顧客にとって何が重要なのかを見極めた上で,グローバルの製品企画担当者と緊密な連携を取り,日本市場向けの適切な商品を企画していく。

 日本法人の規模は当初は30人。ほとんどが日本での採用だ。台湾の会社が日本で事業をやっているというように見られるのではなく,日本企業としてビジネスをしていきたい。日本のカルチャーを身に着けた上で,日本の顧客に製品を提供していく。