普段の授業風景を後ろから。この机を懐かしいと思う人は多いのでは。(写真:エイジ)

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エイジさんがよく使うWebサイトは以下。e-wordsRBB Today ブロードバンド辞典通信用語の基礎知識Ciscoインターネットワーキング用語・略語集拡張子辞典
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その学生は,自宅で有線ルーターと無線ルーターをつないでネットワークを作りたかったそうです。「無線LANの変調方式は…で,UPnPのシーケンスは…だから」などと自信たっぷりに話していたところにエイジさんが「デフォルト・ルートは?」と聞くと「???」となってしまったとか。

 

 僕が教えている専門学校には,学生向けにさまざまなコースが用意されています。ネットワークのコースはその一つですが,ほかにデータベースやプログラミングのコースもあります。僕は,ネットワークを専門外とする学生の授業も受け持っていますが,学生達から「ネットワークは難しい」,「わけわかんない」,「苦手」なんてよく言われます。

 こうした学生から話を聞いてみると,ネットワークが嫌いになるいくつかの理由が見えてきます。だいたい三つくらいあるんじゃないかな。

 一つ目の理由は「用語」です。ネットワークは専門用語が多いうえに,一つの用語に違う概念があったり,反対に,一つの概念にいくつも呼び方があったりしますよね。英語の略語が多いのも取っ付きにくいみたいです。

 これらの例としては,「TCPセグメント」と「LANセグメント」,「パケット」と「フレーム」と「データグラム」,「SNMP」と「SMTP」などなど。ちょっと考えただけでも思い当たる用語がたくさん出てきます。

 こうした専門用語は地道に覚えていくしか手がないと思います。学生には,「わからない用語に出会ったらすぐ用語集か用語検索サイトで調べなさい」と言ってます。用語をしっかり覚えておくとその先の理解が早まるので,書籍の用語集を活用したり,普段使っているWebブラウザに用語検索サイト*1をブックマークしておくのがいいと思います。

 二つ目の理由は,「どこまでいったらネットワークのことがわかるようになるのかわからない」ところです。ネットワークの基礎技術を解説している書籍の多くは,新しい技術,昔からずっと使われている技術,今はもう使われてない技術などが,ごっちゃに説明されています。そうすると,覚えなきゃいけない技術が無限にあるように思えてきます。頑張って勉強しているのにまだまだ裾野にいるような感じがして,いくら勉強してもわかったつもりになれない。真面目に勉強する人ほどこのように思ってしまうんじゃないかな。

 実際,覚えなきゃいけないことはたくさんあるとは思います。でも,僕みたいに「まあ,この程度を知っていればよしとするか」くらいの“いい加減さ”も,苦手意識を克服するためには必要なのかもしれません。

ネットワークは全体が見えにくい

 三つ目の理由は,「個々の技術の理解に終始しがちになる」ことです。ネットワークにはいくつもの技術があるので,一つひとつ技術の理解に努めることになります。この技術はこう動く,別の技術のしくみはこうで・・・と。そこまではいいのですが,「じゃあ実際それらの技術を使ってネットワークがどう構成されている?」と問われると,わからなくなってしまう人が多いようです。

 以前,HTTPのやりとりのしくみやブロードバンド・ルーターが搭載している機能など,個々の技術にすごく詳しい学生がいました。でも,自宅でちょっとしたLANを組むことができないという相談を受けたんです。その学生は,「HTTPはこうやりとりする」,「無線LANの動作はこう」と,個々の技術はとてもよく理解しているんだけど,それらがネットワーク全体のどの部分でどう使われているかが理解できていなかったんですね*2

 これについては,例えば,イーサネットとTCP/IPを使ったTelnetのやりとりなど,基本的なネットワークのモデルをしっかりと理解することが,ネットワークの全体像を理解する近道になるんじゃないかと思います。

 個別の技術だけだと全体がわからない。でも個別の技術を知らないと先に進まない。ネットワークを勉強するときには,この「全体」と「個別」という二つの視点が大切なんだと思います。


筆者紹介
ネットワークの勉強サイトRoads to Nodeの管理人。Flashで作った動画の技術解説が好評。本職は,技術系専門学校の講師。ITproでは「シスコ資格:CCNAへの道」と題したCCNA試験対策の記事を連載中(毎週火曜日更新)。網野衛二というペンネームで執筆活動も始めている。