図 DHCPリレー・エージェントを使えばほかのネットワークのDHCPサーバーから設定情報を受け取れる
図 DHCPリレー・エージェントを使えばほかのネットワークのDHCPサーバーから設定情報を受け取れる
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 DHCPリレー・エージェントは,別のネットワークにあるDHCPサーバーにDHCPメッセージを中継するしくみである。複数のネットワークに関するネットワーク設定情報を,1台のDHCPサーバーで管理できるようにする。

 DHCPは,ネットワークを利用するために設定するいろいろな情報を,自動で取得して設定するしくみだ。例えば,ネットワークの中で自分を識別するための「IPアドレス」,通信の中継を依頼するルーターを示す「デフォルト・ゲートウエイ」,どのあて先のときにはルーターに中継を依頼するのかを示す「サブネット・マスク」,www.nikkeibp.co.jpのようなドメイン名からIPアドレスを調べる「DNSサーバーの場所」,といった情報が,DHCPを使えば自動的に設定できる。

 パソコンなど情報を取得する側でDHCPクライアントが動作し,ネットワークにつながったときにDHCPサーバーに設定情報を問い合わせる。DHCPサーバーは,パソコンをつなぐネットワークを調べて,IPアドレスがほかの端末とダブらないようにきちんと管理しながら,空いているIPアドレスを割り当てて管理台帳の記録を更新しておく。

 ただし,このDHCPクライアントとDHCPサーバーの間でやりとりするメッセージはブロードキャストで送られる。このため,メッセージはルーターを越えて別のネットワークに届かないため,ルーターを介したネットワーク間ではDHCPのやりとりがうまくいかなくなってしまう(図の1)。そこで活躍するのがDHCPリレー・エージェントである。

 DHCPリレー・エージェントは,ルーターの機能として実装されているのが普通である。DHCPクライアントと同じネットワークにあって,別のネットワークにあるDHCPサーバーとのやりとりを中継する(図の2)。つまり,DHCPクライアントからブロードキャストで送られてくるメッセージをいったん受け取って,ユニキャストのIPパケットに直してDHCPサーバーに転送する。DHCPサーバーからの応答も,いったんDHCPリレー・エージェントが受け取ってDHCPクライアントに転送する。こうすれば,1台のDHCPサーバーで複数のネットワークに設定を割り当てられるようになるわけだ。

 DHCPリレー・エージェントには,ネットワーク管理者が対応するDHCPサーバーのIPアドレスをあらかじめ登録しておく。また管理者は,DHCPサーバーにもDHCPリレー・エージェントのIPアドレスと対応するネットワークを登録したうえで,各ネットワークの設定情報を登録する必要がある。