米Blue Securityが提供していた「Blue Frog」というスパム・メール対策サービスは,スパム・メール送信者(スパマー)に対して,スパマーがメールを送信した分だけメールを送り返すというものだった。その結果,スパマーは大量のメールを受信し,彼らのネットワークに大きな負荷が生じた。これはスパム・ビジネスを行う上での当然の代償である。ユーザーには迷惑メールの配信をいつでも停止できる権利があるはずだ。 しかしその一方で,2006年5月初めからBlue Securityへの攻撃も増加していった。

 Blue Securityはプレスリリースで「Blue Frogのリリースにより,10人中6人のスパマーがBlue Frogユーザーへのスパム送信を停止した」と公表している。しかし,あるスパマーが同社に反撃し,他のネットワークへも影響を及ぼすDoS(Denial of Service:サービス拒否攻撃)をしかけた。

 そして5月中旬,Blue SecurityはBlue Frogサービスを終了することを発表した。同社はWebサイトに掲載されたメッセージでサービス停止の理由を次のように説明している。「今回のDoS攻撃から復旧した後に検討した結果,Blue Communityを再開すると,スパマーは再度攻撃をしかけてくる,との結論に達した。当社は果てしなく続くサイバー戦争の中で,継続的なサービスの提供に責任が持てない。当初の目標には及ばずとも,当社はこれまでの業績で満足せざるをえない」

 Blue Frogにスパマーが継続的な攻撃をしかけたことによって,他のネットワークに深刻な影響を与えたのは事実であり,Blue Securityが自社以外への影響を考慮してサービス停止の決定を下したことは明らかである。しかし,Blue Securityの決断は同社にとってもインターネット・コミュニティにとっても最善だとは思えない。なぜなら,状況はさらに悪化しているのだ。

 Blue SecurityがBlue Frogの継続断念を決定した後でも,スパマーは再度攻撃を行ったのである。Blue Securityのサイトに対する二回目のDoS攻撃は,Blue Securityが防御のために相当な技術的努力を払ったとしても回避不可能であった。

 サービスの停止は道理にかなった選択に見えるが,結局,絶え間なく侵入を試みる悪意ある者にネットワークとその管理権を明け渡すことになるのだ。Blue Securityにはその決断を翻し,Blue Frogを再開することを希望する。そうでなければ,Blue Securityが手放した領域を早くだれかが引き継いでくれればと思う。団結して戦うことが非常に有効であることは証明されており,その機運が失われるのを目の当たりにはしたくない。

第1回「先駆けとなった「Blue Frog」とは」
第2回「スパマーに降伏したBlue Frog」
第3回「Frog(カエル)の復活」