ヒアリングのために初めて訪れた、バリ島のリゾートホテル。だが事務室はもぬけの殻だった——「覚悟してはいたが、まさかここまでとは…」。ASP(横浜市)のCEO、浅田高春は絶句した。
=文中敬称略
衝撃のバリ島訪問からさかのぼること3週間の2005年6月28日のことだ。ASP社の浅田は、マーケティング本部長COOの河原伸之を伴い、知り合いのWebデザイナーが構える東京・渋谷の事務所を訪ねた。「お客さんが、海外のリゾートホテルのシステムを欲しがっている」と聞き、もう少し詳しく知りたいと思ったからだ。
その「お客さん」とはジェイ・ユー・エフ・カインズ(東京都千代田区、山田圭祐社長)。ウエディングドレスのリース業をスタートに、結婚式場やレストラン経営、近年はインドネシアのバリ島でのリゾート施設運営にも乗り出している。これらの事業に投資する会員を募り、利益を還元する事業を展開しているという話だった。
浅田らの自慢の商材は、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)に特化した自社開発の基幹業務ソフト「助太刀シリーズ」。海外リゾートホテルには打ってつけかも知れない。
「売り上げが把握できない」
渋谷の事務所に到着すると、ジェイ・ユー・エフ・カインズの企画・制作担当、森原崇友がすでに来ていた。浅田と河原は急展開にとまどいを覚えつつも、森原の話を聞いた。
森原は難題を抱えていた。ヨーロッパからの長期滞在客向けだったビンタンホテルを、日本人向けの高級リゾートとしてオープンさせてから3カ月。全面改装して日本食レストランを新設し、日本人スタッフも置くなど、集客面の強化は着々と進めていたが、肝心の売り上げが現地から全く報告されないのだという。
運悪く、オープンの約3カ月前の2004年12月26日に、スマトラ島沖地震が発生、インドネシアの観光業は大打撃を被っていた。ビンタンホテルは、日本人向けにリニューアルした効果もあり、他のリゾートホテルよりは早く回復に向かったというが、地震前の水準にはまだ遠い。こうした状況で確実にホテル事業を軌道に乗せるには、収益管理を現地任せにせず、予約状況から売り上げ、支出に至るまで日本から正確に把握できるようにしなければならない。森原は焦っていた。
実は、森原は大手パッケージベンダーからも、販売管理システムのASPについて見積もりを取っていた。だがそこで分かったのは、パッケージの機能は良くても、ASP対応という点では弱いということだった。端末を増やすと途端に料金が跳ね上がる点も不満だった。
こうした事情を打ち明けた森原に対し、浅田らはその場で見積もりを概算してみせた。「両社の見積もりを比較したら、納期は約3倍、コストは約3割違った」と森原は明かす。
浅田が正式な提案書を森原に見せたのは7月5日。2回目の面談である。浅田は「文化が違う外国で、これだけのことを一度にやるのは難しい」と、売上管理、会計、予約の3段階で進めるプランを提案した。森原はこの時、「浅田さんは、こちらのやりたいことをみんな聞いた上で、将来の見通しも含めた現実的なプランを示してくれた。英語も堪能で、この仕事を頼めるのは浅田さんのところしかないと思った」という。
本記事は日経ソリューションビジネス2006年7月15日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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