最近,東京地方では気温が上がり,同時に湿度が高く蒸し暑い日が続いています。梅雨空ももう少しの辛抱で,からっとした夏がもうすぐやってきますが,こういった梅雨時は蛍が舞う季節でもあります。今回は,LEDを蛍の光のように点滅させる「電子蛍」を作ります。

 LEDは,電圧をかけてから点灯するまで,そして電源を切ってから消灯するまでの時間が短いので,そのままでは蛍のような,尾を引いた残光が出ません。例えば,本連載第2回で作った自転車用の点滅ライトのように,普通に点滅回路にLEDを接続しただけでは,だめです。「残光点滅」とでも呼ぶのでしょうか,LEDを蛍のように点滅させるには,オンにしたときには徐々に電流値が大きくなり,オフにしたときには徐々に電流値が小さくなるようにする必要があります。それには,積分回路を使います。

 では,回路を紹介します。まずは点滅部分の回路からです。今回も自転車用点滅ライトと同じ,トランジスタ2個を使った「無安定バイブレータ回路」を使います。前回の記事に対して読者の方から,「トランジスタ1個でも点滅回路を作れますよ」というアドバイスを頂いたのですが,私にはその回路が分かりませんでした。また,今回は,複数のLEDを,それぞれ違ったタイミングで点滅させようと思うので,この回路にしました。

 自転車用ライトでは,白色LEDと青色LEDを使ったので,電源電圧を4.5V(乾電池3本)にしましたが,今回の電子蛍には,蛍の色に近い黄色LEDを使います。黄色LEDのVF(順方向電圧)は約2Vです。これなら乾電池2本(3V)でいけそうです。黄色LEDにも,超高輝度タイプのように,VFが約2.4Vと高いものもありますが,淡い光の電子蛍に超高輝度タイプは不要です。

 図1が電子蛍の回路図です。「無安定バイブレータ回路」に接続した抵抗(R6)とコンデンサ(C3)の部分が積分回路です。そしてその先に付けたトランジスタ(Tr3)をスイッチにして,LEDを光らせます。


図1●電子蛍の回路図。積分回路を使って,LEDを残光点滅させる
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 図2は,図1の回路をブレッドボード上に組んだものです。実際に電池をつないでみると,蛍のように残光点滅します(図3)。抵抗とコンデンサの静電容量は,いくつかの組み合わせを試行錯誤した結果,次のように決めました。

・R1 1kΩ
・R2 47kΩ
・R3 47kΩ
・R4 1kΩ
・R5 100Ω
・R6 47kΩ
・C1 100μF
・C2 100μF
・C3 47μF


図2●ブレッドボード組んだ電子蛍の回路


図3●実際に点滅する様子
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 図4は,図2のパーツをユニバーサル基板に組んだものです。緑-白が電源線,赤-黒がLEDへの配線です。図4を見ると分かるように,LEDを3個接続しました。積分回路を介して接続したのが図4の右端です。図4左端の配線のLEDは,図1の回路のR1の下に接続しています。そして,図4の中央にある配線のLEDは,図1の回路のR4の下に接続しました。つまり,図5のような回路になっています。


図4●ユニバーサル基板にパーツを組んだ
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図5●実際に実装した回路の回路図。LEDを3個付けた
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 組み上げた回路を,虫かごにレイアウトしてみました(図6)。100円ショップで売られていた造花を虫かごに入れ,子供に描かせた蛍の絵をLEDに貼ってみました。


図6●虫かごにレイアウトした電子蛍

 部品代は,合計で約600円でした。内訳は以下の通りです(部品の単価は購入店や購入数によって変わります)。

・LED3本 150円
・電解コンデンサ3個 150円
・抵抗6本 60円
・トランジスタ(2SC1815)3個 150円
・ユニバーサル基板(小) 100円
・リード線 少々