ネットワーク上にあるパソコンなどの複数のコンピュータを接続し、仮想的に1台の高性能コンピュータとして利用する手法。性能が低い安価なコンピュータ(パソコン)を数百台接続して並列に処理させることで、スーパーコンピュータ並みの高速処理が可能になる。

 グリッド・コンピューティングは、用途で呼び方が異なる。科学技術計算を行うのはサイエンス・グリッド、大規模データ処理やデータベース処理を行うのはデータ・グリッド、会計処理などを行うのはビジネス・グリッドと呼ばれる。

 グリッド・コンピューティングはもともと、ネットワーク上にある複数のコンピュータのCPUやメモリー、ディスクなどのリソースを集めて、複雑な科学技術計算を実行するための仕組み。「グリッド」とは、送電網(パワーグリッド)の意味で、電源プラグをコンセントに差せば電気が使えるのと同じように、CPUやディスク、ネットワークなどのリソースをいつでも利用できるようにすることを目指している。

 グリッド・コンピューティングの動作原理は以下のようになる()。まず1台のコンピュータがマスターとなり、各コンピュータへの命令・データ送信、スケジューリングなどを担当する。ノードとなる各コンピュータでは、マスターとデータをやり取りするためのミドルウエアを実行しておく。マスターは、各ノードに対してデータと命令を送信し、処理を依頼する。各ノードは依頼された処理を実行し、結果をマスターに返す。マスターはすべてのデータが返ってきたかどうかをチェックして次のデータ処理を依頼する。

図●グリッド・コンピューティングのデータの流れ
マスターから各ノードのミドルウエアにデータと指令が送られ、各ノードは計算結果をマスターに返す

 グリッド・コンピューティングの利点の1つは、ノードとなるコンピュータに異機種が混在してもよい点にある。各機種用のミドルウエアを用意すれば、機種の違いはミドルウエアが対応する。ノードに渡すデータや命令を変更する必要はない。

 異機種が混在するグリッド・コンピューティング環境を実現するには、通信方式やインタフェースなどの標準化が不可欠。現在、グリッド・コンピューティングの標準化は、非営利団体GGF(The Global Grid Forum)を中心に進行中。日本では、富士通、日立製作所、NEC、日本IBMなどが「グリッド協議会」というコンソーシアムを結成し、GGFと連携して技術開発や標準化などを進めている。

 GGFはグリッドの標準技術仕様としてOGSA(Open Grid Services Architecture)を作成している。OGSAは、それまでミドルウエアの実装で使われていた様々なプロトコルをSOAP、WSDLなどに統一し、グリッドとWebサービスの基本プロトコルを共通化した。これにより、ビジネス・グリッドの構築に既存のWebサービスを利用でき、システム開発が容易になる。また、グリッドの仮想化やプロビジョニング機能と組み合わせれば、Webサービスに対するリソースの動的割り当てができる。