今回は,PHPのリリース関連情報,6月30日にリリースされたフレームワークの本命Zend Framework 0.1.4などの話題について紹介する。

PHPリリース関連情報

 今月も,先月に続いてPHPのリリース関連の動きは少ない。先月紹介したPHP 4.4.3の正式リリースは遅れているが,7月5日にRC2がリリースされており,遅くとも7月中にはリリースされる見込みである。以下,PHP 4.4.3に関する情報について,RC2における変更点を中心に紹介する。

PHP 4.4.3の正式リリース遅れる

 開発の主体は既にPHP 5やPHP 6に移行しており,PHP 4では主にバグ修正のみが行われている。ただし,前回のPHPウォッチで紹介したNexen.netの調査結果によれば,PHP4からPHP5への移行は進みつつあるものの90%のユーザーはまだPHP 4を使用しているという現状が明らかになっており,セキュリティ上の修正を含むPHP 4のメンテナンスが継続的に行われることに関するニーズはまだまだ根強いと言える。

 1月13日に行われたPHP 4.4.2のリリース以降,PHP 4系の新たなリリースは行われていないが,セキュリティ上の修正を含むPHP 4.4.3がリリース直前となっている。PHP 4.4.3は,5月22日にRC1 (リリース候補1版)がリリースされ,当初の予定では,5月末にも正式リリースが行われる予定であったが,その後も修正と確認作業が行われており,7月5日にRC2がリリースされた。PHP 4.4.3RC2のアーカイブは,PHP 4.4系のリリースマスターであるDerick Rethans氏が管理するページ(http://downloads.php.net/derick/ )からダウンロード可能である。PHP 4.4.3のテストが順調にいった場合,7月半ば以降に正式リリースの予定となっている。

 RC2ではRC1以降,以下のような修正が新たに行われている。

  • error_log()関数におけるセーフモードのチェックの改良
  • tempnam()関数における極端長いパスの処理の修正
  • phpinfo()に長い入力が行われた場合に発生するクロスサイトスクリプティングの修正
  • Apacheの設定値をPHPが上書きしてしまうというバグの修正
  • WDDXエクステンションのシリアル化処理に問題があり,UTF-8エンコードされた文字列のエンコードが誤ったものとなる場合があった。

     これらのバグには,セキュリティ上の修正点も含まれているため,正式版の早期リリースが望まれる。

    Zend Framework関連情報

    開発用インフラが整備される

     既に本連載でも数回紹介しているPHP5用フレームワークZend Frameworkの開発が急ピッチで進んでいる(第25回 PHPフレームワークの本命「Zend Framework」登場)。Zend Frameworkの開発には,ライセンス条項(CLA)に同意した開発者であれば誰でも参加することができる。既に複数の開発者が開発に参加しており,効率的に開発を行うために,新たな開発用インフラが6月29日に整備・公開された。開発用のインフラは,以下のツール郡から構成されている。

    Subversion (SVN)  ソースコードバージョン管理ツール
    JIRA (bug/issue追跡,プロジェクト管理)
    Confluence ( JIRAに統合されたWikiエンジン)
    Fisheye (SVN変更ブラウザ)
    Crucible (コードレビュー用ツール)

     Bug/Issueトラッキングおよびプロジェクト管理ツールとして,Atlassian社の JIRAが使用されている。JIRAを初めとした各ツール自体はPHPで書かれていないが,現時点で優れているツールをPHPで書かれているかによらず選定したとのことである。

     Zend Frameworkは,複数のコンポーネントから構成されており,開発はコンポーネント単位で行われている。コンポーネントは,正式採用されているコンポーネントが入るcoreとテスト版が入るincubatorに分けられている。新しいコンポーネントが開発される際には,以下の3段階の手順をふむことになる。

    1.仕様となる文書を提示して提案(proposal)を行う。一定期間のレビューの後,提案の採択を行う。
    2.提案が採用されると,incubatorに実装が入れられる。(採決の結果,変更が必要となった場合,laboratoryに実装が入れられる可能性がある。)
    3.実装が安定し,Unitテスト,ドキュメントが完備した時点でcoreに移動される。

     Wikiに掲示されているコンポーネントの提案ステータス(http://framework.zend.com/wiki/display/ZFPROP/Home)によれば,本稿執筆時点で23件の新規提案が行われており,このうち7件が提案のレビューの段階にある。
     機能追加,バグ修正などもコンポーネント単位で行われ,バグ追跡システムを通じて管理されている。各リリースに関するロードマップなどもWikiエンジンに統合され,見やすくなっている。PHP+CVSを採用するPHP,PEAR,PECLの開発用インフラなどに比べると,開発用インフラが進化している印象を受ける。

     そして6月30日には,Zend Frameworkの最新版であるバージョン 0.1.4が公開された。