私は,データベースについての最初の授業を1987年にペンシルバニア州立大学で受けた。今でも覚えている1つの講義がある。その講義で,私たちはデータベースとは何なのかについて討論し,データベースの意味を定義しようとした。よく整理された金属製のファイル・キャビネットはデータベースの性質を帯びている,ということに私たちは全員同意した。教授がある統計を引用して,企業のデータの大半は,私たちが勉強することになる「本当の」データベースではなく,スプレッドシートのような厳密に構造化されていない電子フォーマットに保存されている,ということを力説していたのも覚えている。現在でも,国際的なビジネス界の大部分が「本当の」データベースの外側に膨大な量のデータを保存している,と私は考えている。

 インターネット上で公開されている「Double-Tongued Word Wrester Dictionary(二枚舌辞書)」は,英語という言語の主流から離れた場所で使われている言葉の中から,記録されていないものや,過小評価されているものを取り上げて記録している楽しいサイトである。このサイトに,米Info-Tech Research Groupが執筆した「Spreadmarts Bad for Business(スプレッドマートはビジネスに悪影響を与える)」という記事からの引用が掲載されていた。その記事では,Spreadmart(スプレッドマート)が次のように説明されていた。

 「貴重な企業データを含むスプレッドシートが好き放題に複製され,それらが複数のユーザーに個別に修正されると,ファイルの数だけ“真実”があるという事態になってしまう。真実の断片でしかないこれらの1つ1つのファイルは,“スプレッドマート”と呼ばれる。2002年にWayne Eckerson氏によって発明されたこの言葉は,スプレッドシートとデータマートの両方を意味を含んでいる」

私は今後の複数のコラムで,スプレッドマートという概念について考察していくつもりだ。さらに誠に勝手ながら,スプレッドマートという言葉の意味を拡大し,従来の解釈ではBI(ビジネス・インテリジェンス)データとはみなされない可能性のあるデータソースもスプレッドマートに含めることにする。例えば,私は先日,何人かの同僚,そして米MicrosoftのSQL Server開発チームのメンバーといっしょに,リアルタイムのBIについて話し合った。そして「RSSフィードの上にツールを作ることがリアルタイムBIといえるのだろうか」という疑問にぶち当たったのだ。従来の解釈だと,この概念はBIの分野には含まれないかもしれない。だが,BIツールの面白い利用方法である,といえないこともないだろう。

 スプレッドマート現象は,Microsoftの様々なグループが解決に努めてきた,スプレッドマートが,データ管理上の問題であることは理解されている。そして,ExcelやSharePoint Portal Server,InfoPathといった現在のMicrosoftに搭載されている多くのツールは,様々な方法でスプレッドマートの問題に対処するよう作られている。現在開発中のOffice 2007には,サーバー・ベースの興味深いテクノロジがいくつか含まれているし,既存製品の改善によって,スプレッドマートに対処するという目標も達成に近づくだろう。またMicrosoftは6月に「Office PerformancePoint Server 2007」を発表したばかりである。これは同社の全てのBIツールを結びつける統合BIプラットホームだ。

 読者の皆様はスプレッドマートについて,どのようにお考えだろうか? いつかこの問題を完全に解決することはできるのだろうか? これは,向こう数ヶ月に渡って断続的に議論していく価値のある話題だと思う。

次回:スプレッドマート問題をどう解決すべきか