米Microsoftは先日の「TechEd 2006」で,2006年末に出荷する予定の「Microsoft Exchange Server 2007」の新機能を詳しく説明した。同社はデモを紹介するWebサイトを設けているので,2006年夏にリリースされている予定の「ベータ2」のテストを考えているユーザーは,事前にこれを閲覧しておくと良いだろう。今回のコラムでは,Exchange 2007の新機能の中でも特に誤解の多い「サーバー・ロール(役割)」やクラスタリング機能について,詳しく説明しよう。

 筆者のメールボックスには,「サーバー・ロールは1台のサーバー上で共存できるのか」または「サーバー・ロールは共存させない方が良いのか」といった質問がよく寄せられる。Exchange 2007のサーバー機能はモジュール構造になっており,それぞれを単独でインストールしたり削除したりできる。5つのサーバー機能のうち4つ(メールボックス,ハブ・トランスポート,クライアント・アクセス,ユニファイド・メッセージング)は,1台のサーバー上に共存可能で,いつでも動的に追加したり削除したりできる。

 「エッジ・トランスポート」という機能は,別のサーバーにインストールしなければならない。なぜなら迷惑メールなどをメールボックスに届く前に検査するエッジ・トランスポート機能は,LAN内だけで動作する他のサーバー機能とはことなり,エッジ・ネットワーク(LANとWANの境界)で動作する必要があるからだ。

 この回答は,別の質問の答えにもなっている。つまり,エッジ・トランスポート機能は必ず必要というわけではない。エッジ・トランスポート機能を導入すると,いくつかのセキュリティ機能やメッセージの安全性を保つ機能が追加される。しかし,インターネット・メールを使うだけなら,ハブ・トランスポート機能の設定を少し変更するだけでよい。その他の機能に関して言うと,クライアント・アクセス機能とメールボックス機能,ハブ・トランスポート機能は必須であり,Exchange Server群の中に,これらの機能がそれぞれ最低1個ずつ存在する必要がある(メールボックスが無くても運用できなくはないが,何のためにExchangeを使うのか分からなくなる)。

メールボックス・サーバー機能のみクラスタリングに対応

 クラスタリングを利用しているExchange管理者からは,Exchange Server 2007のクラスタリング機能について質問をよく頂く。クラスタリングは,メールボックス・サーバー機能では利用できるが,他の機能では利用できない。メールボックス以外の機能が果たす役割を考えると,その理由が分かるだろう。これらの機能は一時データを処理だけである。またExchange Server 2007では,メールボックス機能以外の機能が利用不可能になっている場合に,クライアントが他の利用可能な機能を探すという動的な機能発見ツールが提供される。

 例えば,「Office Outlook 2007」を起動したとき,メールボックスが使用するクライアント・アクセス・サーバーがダウンしていた場合,「Outlook Autodiscoverプロセス」が,利用可能な他のクライアント・アクセス・サーバーやメールボックス・サーバーを見つけ出してくれる。Outlook Autodiscoverプロセスは,Outlookが起動して一定の時間がたってもクライアント・アクセス・サーバーやメールボックス・サーバーが応答しない場合に実行される。実行のタイミングをシステム管理者が設定することも可能だ。

 クラスタを連続的に複製することによって,1カ所に障害が発生しても運用を継続できる,2つのノードからなるクラスタに基づくホットサイト・フェイル・オーバー・システムを構築することも可能だ。メールボックスのデータは2つのクラスタ・ノード間で複製されるので,たとえプライマリ・ノードに障害が発生しても,障害を免れたノードがシームレスに作業を引き継げる。この点は,Exchange Server 2003に実装されているクラスタリングから大きく進化している。

 スケーラビリティについてはどうだろう? 現時点では,これは非常に難しい質問だ。新しい機能がどの程度の仕事量をこなせるのか知っているのはMicrosoft内部の人々だけであり,彼らはあまり多くを語っていない。なお,ユニファイド・メッセージング・サーバーは,同時に100接続以上の通話を処理できる,と同チームは語っている。確定していないスケーラビリティ関連の数字や主張に基づいて,アーキテクチャに関する決断を下すのは時期尚早だ。製品リリースが近づくにつれて,より具体的なパラメータが明らかになり,様々な機能の処理に応じたサーバー・サイズを決められるようになるはずだ。