図 アクセス・ポイントの設定を子機に自動入力することで設定を簡素化するSimple Config
図 アクセス・ポイントの設定を子機に自動入力することで設定を簡素化するSimple Config
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 Simple Configとは,無線LANの推進団体である「Wi-Fiアライアンス」が決めようとしている無線LANの簡単設定規格の開発コード名である。

 最近の無線LAN機器はすでに,ベンダー独自の簡単設定機能が実装されていて,だいぶ設定が楽になっている。

 例えばバッファローが提供している「AOSS」は,子機側でユーティリティ・ソフト上のボタンを押してからアクセス・ポイントのボタンを押すと,アクセス・ポイントと子機の間で設定を完了するしくみである。ほかにも,NECの製品は「らくらく無線スタート」,コレガの製品は米アセロス・コミュニケーションズが開発した「JumpStart for Wireless」と呼ぶ簡単設定機能を備える。

 これらはどれも,無線接続とセキュリティ機能の設定を簡素化するための機能。ただし,どれもベンダー固有の独自方式なので,相互運用性はない。そこで,異なるベンダーの製品間でも設定を簡素化できるように規格化作業中なのが,「Simple Config」である。

 Simple Configは,無線LAN製品の相互接続性を保証するWi-Fiアライアンスで開発している。Wi-Fiアライアンスはこれまで,IEEEの無線LAN規格に沿って,PHY(物理層)やMAC(メディア・アクセス制御)部分の相互接続性をテストするための認定プログラムを策定するだけで,規格化作業はしていなかった。だが「簡単設定の規格を作る標準化団体がなかった」(Wi-Fiアライアンス)ため,Wi-Fiアライアンスは初めて無線LAN関連規格を定めることになった。

 無線LANを使うには,アクセス・ポイントに設定したESS-ID(アクセス・ポイントを識別するID)のほか,WEP(wired equivalent privacy)やWPA(Wi-Fi protected access)といったセキュリティの種類,それらで必要となる暗号鍵(またはフレーズ)などを設定する必要がある。これらは,アクセス・ポイントと子機の間で共通にしておかなければならない。

 Simple Configでは,これらの設定をアクセス・ポイントから子機へと送信するためのしくみを規定する。アクセス・ポイントに設定した内容がそのまま子機に反映されるので,ユーザーが子機を設定するのにかかる負荷を軽減できる。アクセス・ポイントから子機に送信する設定内容は公開鍵暗号方式で暗号化して送られるので,盗聴されたとしても内容は守られる。

 ユーザーの操作方法は2種類用意されている。一つは,プッシュ・ボタンを押すことでアクセス・ポイントと子機がお互いを認識し,設定を送受信する方法。もう一つは,物理的なボタンではなく,ソフトウエアの操作でアクセス・ポイントと子機で設定を送受信する方法である。ソフトウエアで設定する場合,子機を認証するためにPIN(personal identification number)という固有の番号を使う。アクセス・ポイントに入力したPINと子機のPINが一致すると,アクセス・ポイントが設定情報を子機に向けて送信するしくみである。

 設定方法が2種類あるのはデバイスごとに条件が異なるため。無線LANは家電にも搭載されるなど,対応機器が増えていくと見られているが,機器のサイズやデザインによってはプッシュ・ボタンを備えられないものやディスプレイを備えられないものがある。そこで,プッシュ・ボタンがないものはディスプレイを見ながら,ディスプレイをもたないものの場合はプッシュ・ボタンを押すことで設定できるようにしたのである。

 Wi-Fiアライアンスでは2006年10月からSimple Configの認定プログラム作業を始める予定である。