NTTをはじめとした世界の通信事業者が次世代のネットワーク構築に躍起になっている。その名はNGN(next generation network)。文字通り次世代のネットワークだ。

 NTTの新ネットワーク構築プランは,2002年11月に発表した「“光”新世代ビジョン」にまでさかのぼる。「RENA(resonant communication network architecture)」と呼ぶ,高機能なIP網を構築し,映像などをふんだんに使ったサービスを提供することを目指した。NTTはRENAのためにNTTレゾナント(現在はgooを運営)を設立するなど並々ならぬ力の入れようだったが,この計画は頓挫。曲折を経て2005年11月に「中期経営戦略」として現在のNGN計画を発表した。NTTは2010年までに光ファイバの3000万回線提供を目指しており,NGNがそのコアを担う。

 NGN構築が本格的に始まるのは2007年度下期から。それに先がけ2006年度末から実験場となる「フィールド・トライアル」を開始する。2006年7月中にはフィールド・トライアルの仕様を公表する予定だ。トライアルの仕様が明らかになることで,NGNの上でどのようなサービスができるようになるのか見えてくる。国内外のメーカー,通信事業者の注目がそこに集まる。

 NGNを一口で言うならば「通信事業者のコアとなるIP網」だ。データ通信は元より,電話など従来IPを使っていなかったサービスもすべてNGNの上で提供することを狙う。機能や安定性など,従来のIP網と一線を画したものになる。

先頭を切ったのは英BT

 NGN構築を始めたのはNTTが最初ではない。2004年6月に英BTが「21st Century Network Program」として電話網をIP化すると宣言した。これを皮切りに,KDDIや韓国KT,フランス・テレコムなど世界の代表的通信事業者が次々と電話網のIP化を発表した。

 どうしてこれほど急に電話網のIP化が始まったのだろうか。これには様々な事情が絡んでいる。

 まず,通信事業者の財政事情がある。固定電話の通話料収入は世界中で急減中だ。携帯電話の普及によって固定電話を使う頻度が減っていること,メールなど代替の通信手段が増えているのが原因である。NTTの場合,毎年約3000億円という規模で通話料収入が減っている。

 これまで通信事業者を支えてきた通話料収入が減っていくのをどうやってカバーするか。それには新しい収入源を見つけるか,支出を減らすしかない。支出を減らすには電話網で使っている高価な交換機を,比較的安価なルーターなどに変えるというのが誰しも思いつくこと。企業におけるIP電話を使ったコスト削減と同様だ。一方,新しい収入源を得るための方策がIP網に付加価値を付けていくこと。どちらもNGNにつながっていく。

 第2の事情として,交換機の寿命が近付いていることがある。交換機の寿命は10~10数年と言われているが,既に新規開発は凍結されており,次の更改時には“交換機以外”のものに変えることが必須の状況なのだ。そして,その候補としてはIP網以外考えられない。

 BTがIP網への移行を急いだのは,コスト削減による経営状態の改善と,交換機の老朽化による次世代移行の必要性が特に高かったからだと言われている。