最近のソフト肥大化で,1台のパソコンをセットアップするのに丸1日かかることがあります。このため,社内のパソコンを一括購入する際などに,そのまま通常の手順でセットアップしていてはすべてのパソコンを準備するのに,何日もかかってしまいます。

ひな型PCのイメージを複製

 このような場合,最初にひな型となるパソコン1台にOSやアプリケーションをインストールして,そのディスク・イメージをほかのパソコンへコピーするのがよいでしょう。イメージ・コピーとは,ディスク上に記録されている情報をファイルとしてではなく,ビット列の「イメージ」として複製する方法です。ハードディスクのイメージを直接複製することで,数分~10分程度でインストールでき,多くのパソコンを効率的に作成できます。

 イメージを使ったディスクの複製は簡単です。「Symantec Ghost(シマンテックゴースト)」「HD革命」「DriveCopy(ドライブコピー)」「コピーコマンダー」「TrueImage(ツルーイメージ)」といった市販ツールがいくつも出ています。これらを使えばウィザード形式でディスク・イメージのコピー/リストアができます。

 ただし,元のディスクをそのまま複製しただけでは問題が生じます。IPアドレスのように,本来は各パソコン固有でなければならない情報が重なってしまうからです。コンピュータ名やSID*といった情報についても重ならないようにする必要があります。

固有情報はSysprepで変更


図1 多数のパソコンを導入する場合はひな型となるパソコンのディスクをイメージ・コピーするのが簡単
Sysprepを実行してからイメージを作成すると,各パソコンでミニセットアップが起動してそれぞれに個別の情報を設定できる。

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 この問題を解決するには,複製後に設定情報を変更するようにします。前述の市販製品の多くは,専用ツールが付属しているので,それを使えばよいでしょう。また,マイクロソフトが提供している「システム準備ツール(Sysprep(シスプレップ))」と呼ぶツールを使う手もあります(図1[拡大表示])。

 Sysprepは,個別に設定する必要がある情報を複製後に再設定するツールです。製品CD-ROMに入っているほか,マイクロソフトのWebサイトからダウンロードできます*

 まず,ひな型のパソコンにOSやアプリケーションをインストールして設定します。それから,そのパソコンでSysprepを実行します。すると,SIDなどの重複してはならない設定が削除されます。同時に,その部分を新たに設定するためのプログラム「ミニセットアップ」を再起動後に実行するようにWindowsの構成が変更されます。あとは,このパソコンを終了させて,ディスク・イメージを作ります。

 このイメージをほかのパソコンに複製して起動すれば,最初にミニセットアップが実行されます。ここでは,コンピュータ名,ドメインやワークグループなどを設定し,バックグラウンドで新しいSIDが生成されます。設定ファイルをあらかじめ作成しておくことで,再起動時にいちいちユーザーが設定情報を手入力しなくても済むようにもできます。

 ミニセットアップでは,デバイス・ドライバを再検出します。このため,ひな型としたパソコンと複製先パソコンのハードウエア構成が完全に一致していなくても,ドライバ・ソフトがあれば利用できます。

リモート・インストールも可能

 もしActive Directory(アクティブディレクトリ)*を使っていれば,イメージの配布やインストールといった一連の作業にRIS(remote install service)と呼ぶ標準機能が使えます。RISでは,ひな型となるディスクのイメージをサーバーに格納し,それをネットワーク経由で各パソコンに配信して自動セットアップします。

 パソコンが起動しなくなったときでも,初期状態に簡単に戻すことができます。また,配布対象のパソコンをあらかじめ限定する機能を備えています。もちろん,インストール時にコンピュータ名などを自動設定することも可能です。

 ただし,RISを利用するには,DHCP*サーバーが必須となります。また,Windows 2000 Serverを使ったActive Directoryでは配布対象がWindows 2000 Professionalのみ,Windows Server 2003ではWindows 2000/XP ProfessionalとWindows Server 2003に限定され,ディスクは単一パーティション*構成でないと正しく動作しません。

 なお,イメージ・コピーを使う場合でも,ライセンスはインストールするパソコンの台数分だけ必要となります。このため,ボリューム・ライセンス*版を使った方が,インストールしたあとにプロダクト・アクティべーション*が不要になり便利です。


●筆者:山内 徹(やまうち とおる)
NECソフト ICTシステム事業部
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