「Ubuntu」(ウブンツまたはウブントゥと読む)は,Debian GNU/Linuxから派生したディストリビューションだ。デスクトップ用途,サーバー用途の両方を目指して開発されているが,特にデスクトップ用途では日本語化もされており,かなりしっかりとした作りになっている。
今回はリリースされたばかりのUbuntu 6.06 LTS(Long Term Support) 日本語化版を試用してみた。
Ubuntuって?
以前から「Ubuntu」という名前のディストリビューションの存在は聞いていたが,それほど意識したことはなかった。はっきりと意識するようになったのは,VMware社が「VMware Player」を配布するようになった際に同時に配布を始めた,ブラウザをすぐに使用できる仮想マシン「Browser Appliance」のベースとしてUbuntuを採用していると聞いた時からだ。
確かに,Fedora CoreやopenSUSEをベースのLinuxと採用するのでは一方のベンダーに偏っている感じがするので,ニュートラルスタンスで配布するにはちょうどよいディストリビューションなのだろう。
デスクトップ指向の強いディストリビューションと感じたので,今回はローカルハードディスクにインストールして使うディストリビューションとしての完成度の確認を中心にレビューしてみたい。
Live CDからのインストール
Ubuntu 6.06 LTS(Long Term Support) 日本語化版(以下,Ubuntu)は「Ubuntu Japanese Team」のWebサイトで以下のイメージを入手することができる。
・Desktop CD 日本語ローカライズ版
・VMWare Image 日本語版(VMware Playerですぐに使える)
他にサーバー用途の「Server CD」やKDE化された「Kubuntu」,教育用途の「Edubuntu」, Xfce化された「Xubuntu」なども存在している。オリジナルのDesktop CDにJapanese Teamのパッケージを追加すれば日本語化版と同等になるとのことなので,今後これらの中で日本語化されたものも出てくるかも知れない。
ダウンロードしたISOイメージからCD-ROMを作成し起動すると,インストーラーが起動するのではなく,Live CDとしてデスクトップ環境がすぐに利用できるようになっている(写真1,写真2)。
メニューからはWebブラウザのFirefoxやオフィススイートのOpenOffice.orgなどが直接起動できるようになっており,日本語入力もAnthyが組み込まれているので「半角/全角」キーを押すだけで行うことができる。日本語フォントとしてIPAフォントが組み込まれているので,きれいな日本語フォントで表示が行える点も嬉しいところだ。この状態でも色々と作業が行えるので,1CD LinuxとしてもKnoppixと人気を分けるかもしれない(写真3)。
さらにデスクトップ上にある「インストール」アイコンをダブルクリックすれば,ローカルハードディスクへのインストールが行える。既にWindowsなどがインストールされているハードディスクにUbuntuをインストールしたいのであれば,「システム」メニューから「システム管理」>「GNOMEパーティション・エディタ」を選択することでパーティション管理ツール「GParted」を起動して,パーティションを調整してインストール先パーティションを作ることもできる。
インストール自体は非常にシンプルで,簡単に行える。特徴としては管理者(root)のパスワード設定がない点だろう(写真4)。少し細かい話になるが,管理自体はすべてsudoコマンドを通して行うようになる。/etc/sudoersを見るとadminグループ所属のユーザーはsudoコマンドですべてのコマンドを実行できるようになっている。インストール時に作成したユーザーは自動的にadminグループに所属するようになっているので,自分のパスワードを入力すれば管理作業が行えるようになっている。デスクトップ環境なのであまりコマンドラインで作業することはないだろうが,sudoコマンドに馴染みがない利用者は注意が必要かも知れない。
豊富なパッケージ管理方法
インストール後再起動すると,通常のLinuxデスクトップ環境として利用可能となる(写真5)。前回レビューしたTurbolinux FUJIもそうだが,最近のディストリビューションはどれも完成度が高いため,差別化要因を見つけ出すのが難しい。Ubuntuの場合,デフォルトインストール状態はCD 1枚でパッケージングされていることもあって,インストールされるアプリケーションも必要最低限になっており,比較的すっきりとした印象。さらに必要に応じて利用者がパッケージを追加していくスタイルとなっている。
まずチェックしたいのが「アップデートマネージャ」。既にインストールされているパッケージのアップデート版をダウンロードして更新が行える(写真6)。
日本語環境でより便利に使いたいのであれば「日本語版セットアップヘルパ」を実行する(写真7)。辞書やWebブラウザの「風博士」(写真8),メール・クライアントの「Sylpheed」(写真9)などのオリジナルには含まれていないアプリケーションや,FlashやJavaのプラグイン,Real PlayerやAcrobat Readerなどフリーではないソフトウエアの追加インストールも行える。この辺りをインストールすることで,商用ディストリビューションにかなり近い環境にすることが可能だ。
さらに追加のパッケージがほしい場合には,もちろんDebian系なのでコマンドラインでapt-getしてもよいのだが,GUIの「Synapticパッケージマネージャ」を実行すれば,カテゴリー別に分けられたパッケージを選択してインストールできる(写真10)。唯一の難点は,パッケージ数が全部で18848個(執筆時)もあることだろうか。もしこのような機能を使って環境をフルカスタマイズしていくのであれば,ディストリビューション選び自体,最終的には好みの問題だろう。
Ubuntuを気軽に利用できるデスクトップ環境としてみれば,完成度としてはかなり高いという印象だ。商用系のアプリケーションもWindowsでは個別に一々インストールしなくてはいけないところを,ヘルパで一括インストールできるのも嬉しい点だ。
完成度という点では,商用ディストリビューションにも見劣りしない,高い完成度となっていると感じた。インストールから利用までスムーズに進むので,いい意味でちょっと拍子抜けするぐらいだった。
今回のリリースは長期間のサポートを前提とした「Long Term Support」となっており,デスクトップは3年間のサポートが予定されている(サーバーは5年間)。腰を据えて使うLinuxデスクトップを導入したい人は試してみる価値があるのではないだろうか。
■著者紹介 宮原 徹(みやはら・とおる)氏 ![]() |